第2話

 パステルパープルの壁と壁の間を、舜二はジョンに導かれながら歩く。

 舜二は聞く。


「ジョンはこの迷宮に住んでいるんだろう? この迷宮について教えてくれないか?」


 ジョンは一瞬、横を振り向いてから答える。


「いいだろう。しっかり記憶しとくか、メモをするといいさ、青年」

「いいかい、青年?」

「僕の名前は神楽坂舜二だ」

「ではシュンジ。この迷宮都市を知る覚悟はいいか?」


 舜二は深く頷いた。


「あぁ、もちろんだ。始めてくれ」

「先ず、この都市のルールだが、夜になる前に必ず宿屋かホテルに泊まらなければいけない。

 何故ならば、夜は数多の危険が潜んでいるからだ」


「優希子が心配だ」

「おそらくユキコは無事だろう。彼女は昼間のうちにホテルに入っていったから」

「なら、でも、夜にホテルから出たりしたら危険だ。やっぱり心配だ」

「大丈夫だ。我がこの都市のルールについて説明しておいた」

「優希子はルールを守る女だ。きっと今もホテルに居るに違いない。優希子が泊まったホテルまで連れてってくれないか?」

「ここは迷宮都市。必ずしもユキコの泊まったホテルまで辿り着けるかはわからない。それに今はまだ明るいから、ユキコが外に出て、またホテル街にいったかもしれない。この都市にはいくつものホテル街がある。ユキコが同じホテルに泊まるとは限らない。それでもいいのなら、先へ進もう」


 舜二が立ち止まると、ジョンも立ち止まった。


「…………わかった。なら、可能な限り、すべてのホテル街を巡ろう」

「よし、行こう」


 ひとりと1匹はまた歩き出した。


 しばらく続いたパステルパープルの壁と壁の間の道を進んだ先に、ホテル街が見えてきた。



 日は落ちてきていた。

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