第2話 強制連行されて、転生しましたけど…
「私を助けてください」
『はぁ? 何を言われているのだ。この目の前の女神様?は…』と思っているのが顔に出過ぎている柊。
まぁ、いきなりそんなこと言われたら驚くしかないわね。
「そうですよね!急に言われたら驚きますよね。えーと、すみません。単刀直入に言おうとしたら、ああなってしまって……。順を追って説明いたしますね」と黒髪のツインテールを揺らしている少女の丸っぽい茶色の瞳が申し訳そうに濡れていた........ような気がした。
「ああ、頼む。そうじゃなきゃだめだ。訳分かんねえ。お前を助けるにしてもどうすればいいのかまったくだしさ」と柊君しかめっ面。
そうだよねー。今のところ情報0%だもんね。
「そうですよね!ええと、先ずは名前から!クララといいます!苗字とかはありません!なんたって女神ですから!」
「自分で言うなよ……。にしてもクララねぇ……。現実の後輩と同じ名前か」
そうつぶやく彼に女神ークララは、なぜか真剣なまなざしを向けていた。
しかしそれは、彼の次の一言で消える。
「まあ、あいつと関係なくただ偶然同じってだけか。」
『違います!!!!』と彼女の眼は語っているが彼は気づいていない。
まぁ。つまり、前世でのバイト先での後輩は今目の前にいる女神さまということだね。
「えっと、それでですね。何を助けてほしいのかと言いますと、私が何者なのか分からないので、教えてください。」
「そんなの、こっちが知らねぇよ!!!!」
助けてほしいと言った真意を真剣に伝えるクララと、反射的に突っ込んでしまう柊。
君たち良いコンビじゃん。頑張れ。
じゃなくて、何で分からないの?
「そんでもって、何で忘れてんの自分の事?」
「それが分かれば苦労しません。」
「あー。うん。そっか。じゃあ、今のところ分かっていることは?」
「自分が天使であること。名前がクララであるということ。後は........このままだと没落すること。だけど、今はお供え物が多い事、くらいです。」
「あー、なるほど。相変わらず情報少ないな。でも、状況は大方把握した。........でも、なんで俺に?転生者なら他にもいるだろ?」
たしかに、何で彼に?
「それはー猫が見えていたからです」
「猫?」彼がはたと首を傾げる。
それってもしかして……。
「もしかして、俺が助けた子の事?」
「はい!あの子は........。あれ?いない。まぁ、いいや。私の助手みたいな子なんです。それで所用で現実世界に行ってもらっていたのですよ。そこで事件に巻き込まれかけたということですね」
「うん、それは誰よりも分かってる。でも、何でその猫が俺を選んだ理由につながる?」
それは何となくわかれよ。相変わらず勘が鋭くないね。あの人の血筋だから仕方ないか。
「それは、彼女は神と同様の存在の人しか見えないからです!!!!」嬉々として言うクララとは対照的に、それを聞いて戸惑っている柊。
そりゃ、だってねぇ?
「いや、あの、俺は神とかでは……。決してないかと。」
だいぶ困惑状況。
「もちろん、それは分かっています!ですが、何者か、私以外の神から加護をもらっている、若しくはもらう運命ってことです!」
「はぁ、なるほど?」
そうだよ、柊君。
もう君はとある神から加護をもらっているし、追々ー近い未来で私も君に力を授けるからね?
だからー、これからの運命はどうあがいても逆らえない。
最低でも、私に会うまでは。
「そういえば、助けてほしいとか言ってたけど、俺はどうしたらいいの?」
「あっ!忘れてました!!!!」
「忘れるな!そこ大事なとこだろうが!」
「えと、一先ず転生してもらいます」
「おう、これはテンプレ通り」
「そこは、私が暮らしているところの下界でして、そこで生活しながら情報収集をお願いします。」
「えっ!?なんか思っていたのと違うんですけど!?何か、面倒くさいことに巻き込まれそうじゃない⁉ なんか急に転生とかしたくなくなってきたんだけど!!!!」
「そんなこと言わないでくださいよ。さっきまでノリノリだったくせに。あと、ゲート開けたのに……。」
「ゲート?」
その言葉に惹かれ、周りを見ると少女が周りを囲んでいたカーテンの一部を巻き上げている最中だった。
その隙間からは、ぽっかりと空いた円形の入り口とそこから漏れる蒼白い光。いかにもという雰囲気ですな。
「はい、これからの転生先へつながる入口です。」そう言いつつ、カーテンを巻き上げて、最後まで巻き切った。するとくるりと彼の方に顔を向けた。
「はい。それではよろしくお願いいたします。」と深々と頭を下げるクララ。
「いや行かないよ。ここに残る。」
「それでは、困りますので……。少し手荒な真似をさせていただきます。」
そう言ったとたん、どこからともなく風が吹き付け彼を持ち上げゲートまで軽々と運んで行った。
その様子を呆然と眺めていた柊だったが、ゲートに半身を投入させられてからやっと気が付いた。
「おい、待てよ。俺スキルとかまだもらってないし!どこに行くのか聞いてないし!」大慌て。
「スキルとかは転生初期パックについてるのでご安心を。転移先はさっき言いましたよね?」とすまし顔、怖いて。
「それだけじゃ足りないんだってば!あと、初期パックって何?もう少し詳しく説明してぇ……。」と半泣き状態でゲートの中に吸い込まれて消えて行ってしまった。
「全部私に任せてください、先輩?」と柊が消えていったゲートに笑っている顔がほんとに不気味……。
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一方そのころ柊は……
『あー、おはようございます。意識は覚醒いたしましたが、目を開けるのが恐ろしいです。』
あの女神が言っていることが正しいのなら俺は今転生先に居るはず……。
恐る恐る目を開けてみる。
眩しいな⁉
ちょうど頭上に小さめのシャンデリアがあるんだけど……。
「はい、これ転生の確定だわ。そんで俺は今誰よ。」
もうさっさと諦めて、現状把握に努めようとする柊君なのでした。
女神の飼い猫を助けたら、異世界に強制連行されたのですが⁉ 紫泉 翠 @sorai_4572_
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