第6話
………ヒィィィン
空を切る音と共に、鎌倉の街の空にそれは現れる。
巨大モンスターは、そのボコボコの頭をぐらりと動かして空を見上げた。
「おい、あれ………」
巨大モンスターから逃げていた避難民も、その姿を見た。
それは、本来なら
そして………この状況をどうにかしてくれるであろう、一抹の希望。
「ニクスバーンだ!!」
中学生ほどの少年が叫んだ。
ニクスバーン。
一月ほど前に、あけぼの市に現れたロックキングを撃破した事を皮切りに、稲荷市でのゾンビ騒ぎを静め、ネバーランドでは結果的とはいえモリタの悪行を白日に晒した。
はみだしテイカーズの片割れ、アキヤマ・アズマの駆る、三次元に姿を現したスーパーロボット。
これはロボットアニメではない、目の前で起きている本当の事なのだ。
「姿が違う………進化したのか?」
コックピットから地上を見下ろすアズマは、変貌した巨大モンスターを前に冷や汗を流した。
進行方向の逆に散乱している皮から、あれが上陸した巨大モンスターと同一である事は解る。
「それにドラゴン並み………用心しないと」
しかも、体高も60m近くまで巨大化している。
これはドラゴンよりも少し大きく、その古い特撮映画の怪獣を思わせる風貌も相まって、強い威圧感を感じさせる。
しばらく巨大モンスターの周りを見張るように巡回していたニクスバーンが、フェニックスモードからロボットモードに戻り、大地に降り立つ。
ズゥン!!
轟音と共に、地響きと土煙が舞う。
ニクスバーンが拳を構え、巨大モンスターと退治する。
キュオォーーーロロロロッ!!キュオォーーーロロロロッ!!
巨大モンスターが、威嚇の意思を込めて二度吠える。
アズマは周囲を確認し、街の住人を戦いに巻き込む危険性がないと解ると、戦闘を開始した。
「フェザーミサイルッッ!!」
ニクスバーンの両肩が展開。
そこにから、鳥類の羽を模したような形状のミサイル・フェザーミサイルが次々と射出される。
それは空に煙の軌跡を描いてヒュルルルと音を立て、巨大モンスターに向けて、猛スピードで飛来する。
そして。
どごぉぉぉん!!
着弾。
巨大モンスターが回避する素振りすら見せなかった事もあり、フェザーミサイルはその全てが巨大モンスターに命中した。
そのキノコ雲のような頭に、次々と起きる爆発。
だが。
「………効かない、か」
爆発が晴れた時、そこにあったのは無傷の巨大モンスター。
経験上、これぐらいは予測できたアズマであったが、やはり面食らう。
確かにフェザーミサイルはニクスバーンの武装の中では最弱ではあるが、それでも戦闘機のミサイル並の威力はあるのだ。
「だったら、次はこれだ!!」
とはいえ、驚いている暇はない。
通常火器が効かないなんて、ドラゴン級のモンスターにはよくある話だ。
遠距離武器が効かないのであれば、次は。
「ニクスカリバーッ!!」
射撃がダメなら近接だ。
ニクスバーンの闘剣・ニクスカリバーを引き抜き、巨大モンスターに斬りかかる。
対する巨大モンスターは、相変わらず微動だにせずそれを待ち受けていた。
呆れ返るほどにどんくさいのか?と、アズマが考える中、ニクスバーンの振り下ろしたニクスカリバーの一刃が、巨大モンスターに直撃する。
ガキンッ!!
巨大モンスターはよろけ、奇妙な音が鳴った。
ガキン、と、まるで金属に金属をぶつけたかのような音が。
ロックキングのような硬質の皮膚や鱗を持つならまだしも、眼前の巨大モンスターの体表は、歩く際に少し揺れた様からも解るよう、どう見ても柔らかい体表である。
それで、そんな音が鳴るのはおかしい。
「(どうなっている………?まるで
何度も何度もニクスカリバーを叩きつけ続けるアズマだが、その全てが巨大モンスターの体表を切り裂く事はなかった。
何度切りつけようと肉片が欠ける事すらなく、ただ巨大モンスターが仰け反るだけだ。
相手は、痛みに苦しむ素振りすら見せない………つまり、痛がってすらいない。
アズマはまるで、延々とサンドバッグを殴っているような感覚を覚える。
「このぉっ!!」
これでは拉致があかない。
と、大技を出すためにアズマがニクスバーンに距離を取らせようとした、その時。
ぐわあっ!!
と、攻撃を受け続けていた巨大モンスターが、ついに動いた。
そのキノコ雲のような、はたまたティラノサウルスを連想させる巨大な頭。
そこにある巨大な口を開き、ニクスバーンの腕に噛みついた。
「うわあ………ッ?!」
見れば、ニクスバーンに噛みついた巨大モンスターの口。
乳児のように何もなかったハズのそこから、なんとニョキニョキと牙が生え、ニクスバーンの装甲に食い込む。
「成長している、のか………!?」
驚くアズマを前に、モンスターは次の手に出た。
その強靭な腕で、ニクスバーンに掴みかかったのだ。
たんに捕まえるというよりは、まるでニクスバーンの腕を引っ張り、引っこ抜こうとしているようにも見えた。
間違いない、こいつには知性がある。
それに従い、ニクスバーンにダメージを与えようとしている。
「この、離れろッ!」
コックピットが、ニクスバーンに深刻なダメージが与えられている事を示す、赤いランプに染まる。
当然だ、腕を引き抜こうとしているのだから。
ミシミシと装甲が歪み、間接が悲鳴を上げてスパークする。
火花が散り、警告音が響く中、アズマは巨大モンスターを引き離そうと、必死にニクスバーンの拳で殴り付けた。
しかし巨大モンスターは微動だにせず、万力のようにニクスバーンの腕を締め上げる。
そして、ついに。
………グシャアアッ
潰れた。
引っこ抜けた。
片腕の付け根から火花が散り、ニクスバーンの腕が引き千切られてしまった。
「うわああぁぁあ!!!!」
反動で吹き飛び、地面に叩きつけられるニクスバーン。
その、鮮血がごとく火花が飛び散る中、巨大モンスターは噛み潰したニクスバーンの片腕を「なんだこれ食べられないのかよ」と言うがごとく、吐き捨てるように地面に叩きつける。
ずしゃあっ!と、唾液にまみれて潰れた腕が、付近のビルに突っ込んだ。
これで、スレイプニールアローは使えない。
『警告、腕部破損、警告、腕部破損、警告………』
「わかってるよ!!」
警告ランプで血のように真っ赤に染まるコックピットで、苛立ち叫ぶアズマ。
こんな事は今までなかった。
明確に「負けた」と考えているブラックニクスバーンでさえ、ここまでのダメージを与えてはいない。
アズマは確信する。
こいつは、今まで戦ったどの相手よりも強いと。
こんな危険な存在を、このままにはしておけないと。
「こいつを放っては………おけないんだぁっ!!」
スレイプニールアローは封じられた。
だが、ニクスバーンの持つ最大の武器は、まだ使える。
片腕と引き換えに自由になったニクスバーンは、そのまま空へと飛び上がる。
ニクスバーンの腰が180度回転する。
残った片方の脚部が体育座りのように折り畳まれた。
次に、背中の折り畳まれた翼が開く。
翼はそのものがバーニアになっているらしく、翼の隙間からジェットが噴射される。
腕が前に折り畳まれ、最後に背中の鳥の頭のようなパーツが起き上がり、頭に被さる。
頭部を軸に回転し、鳥の頭が前を向き、変形が完了した。
「チェンジ!フェニックスモード!!」
再びフェニックスモードに変形するニクスバーン。
巨大モンスターの周囲を旋回するように飛ぶニクスバーンの機体は、まるで大気圏突入により熱を帯び燃える流星がごとく、炎のようなオーラに包まれる。
今までで一番の、最大量の火属性の魔力を身に纏っているのだ。
あの巨大モンスターを、確実に仕留める為に。
「フェニックス………ストライクッッッ!!!」
これが、アズマの切れる最善にして最高の
不死鳥となったニクスバーンが、最大出力のフェニックスストライクを巨大モンスターに向けて放った。
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