第4話雷に打たれて
俺は父の墓前に花をたむけた。
「父さん、手紙…読んだよ」
俺は自分の不甲斐なさに涙があふれてくる。実は父が亡くなって葬儀が終わって墓を建てたあと、父の弁護士から連絡があって、「なにかあったら渡してくれ」と父から手紙を預かっていたという。弁護士の人は最後にこう話していた。
「あなたのお父さんは、無実でしたよ」
俺はそれを聞いたとき、驚きと感嘆のあまり「え?」となってしまった。無実?だって…、なんであのとき言ってくれなかったんだよ?父さん…。面会に行ったじゃないか…、なんでだよ…って。
弁護士の人もテレビの取材や週刊誌の取材を受けたひとりだったのだが、この人はなにも吐露しないでいてくれた。まあ、守秘義務とやらがあるでしょうが…
それでも俺は感謝したかった。人によってはオフレコでってこともあるだろうし、あとからわかったことだが、父さんはやってもいないことをでっちあげの証拠と状況で罪を認めさせられたという。父さんは耐えかねて落ちたそうだ。
任意での話は1日間ではあったが、それで耐えかねたとなると、どれほどの力技があったのかと向こうの人たちのしん意を疑うところだ。もう父は死んでしまったから、どうすることもできないが…
墓前であらためて父さんに報告した。
「父さん、俺さ…、父さんみたいな、俺や母さんみたいな人が不幸にならない為に探偵になるよ。最初はあの人みたいな弁護士でも守れる人がいるんじゃないかって思ったんだけど、弁護士って動きが重めじゃん。だから探偵という身軽な立ち位置が俺にはあってると思うんだ。まだ、探偵事務所に就職するにも父さんの件で難しいかもしれないけど、それでも俺はやるだけやってみるから、見守ってくれよ…、父さん…じゃあまた来るから」
天で安らかに眠る父さんに祈るように手を合わせてお別れを言った。すると、みるみるうちに空が雲で覆われて雨が降ってきた。そして雷が鳴って、雨の勢いが強まった。俺は雨宿りするためにお寺へ駆け込もうと走りだした。その瞬間、空が光り、雷が俺に向かって落ちてきた。俺は避ける間も無く直撃した。俺は死んだと思った。
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