4-6 報告と祝福

 長兄との面談を済ませたギジェルミーナは、応接間を退室してその棟から去る。

 慣れた自室に戻ると、カミロが机でペンやインク壺の手入れをして待っていた。


「皇帝陛下と、何のお話でしたか」


 作業をしていた手を止めて、カミロはギジェルミーナの様子を伺う。

 ギジェルミーナはなかなか悪くはない気分だったので、声を弾ませて答えた。


「私の結婚だ。相手はグラユール王国のイェレ国王」


 部屋の中央まで進み、改めて自分でも確認するようにギジェルミーナは、結婚する相手であるイェレの名前を告げる。

 カミロはそのギジェルミーナの表情の明るさを見て、自分もまた表情をゆるめた。


「それはおめでとうございます」


 ギジェルミーナの短い答えに根掘り葉掘り聞くことなく、カミロはただ主が新しい人生を歩むことを祝う。

 真面目に祝福されるのが気恥ずかしかったので、ギジェルミーナはカミロにすぐに与える仕事の話をした。


「お前も連絡役として、ときどき来てもらうことになるからな」


 よその国に嫁いだとしても、ギジェルミーナは帝国の皇女であることを期待され、書簡のやりとりは頻繁にすることになると思われた。

 だからその書簡を届ける役目は、信頼できるカミロに任せることにする。

 そのことを伝えると、カミロは丁重にお辞儀をした。


「はい。仰せのままに」


 ギジェルミーナはカミロから、承諾以外の返事を聞いたことがなかった。

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