ある姉弟の33の事情

1、海に行きたい

「ねえねえ、こうちゃん。見て見てー。新しい水着買っちゃったっ。どう思う? 可愛い? 似合う?」

「千鶴ジャマ。今、対戦中」

「んもう、ちょっとでいいからこっち見て」

「うるさい」

「こうちゃんのバカー。こっち見てったら」

「馬鹿はおまえだ。重たい、どけ」

「どかないー。見てったら見てー」

「はいはい。可愛い可愛い」

「でしょー、早く海に行きたいなぁ。海開きしたらさ、すぐ行こう。ね、こうちゃん」

「行かねえ」

「なんでー」

「行・か・ね・え」

「こうちゃんのバカー」

「馬鹿はおまえだ。くつくな、暑い」

「もういいもん、ゼミの先輩と行くもん」

「こないだ一緒に飲みに行った女の先輩だろ」

「違うもん。別の男の先輩だもん」

「!?」

「うっそぴょーん。もう、こうちゃんのやきもちやきやさん。そんな顔しなくても、お姉ちゃんがこうちゃんを海に連れていってあげるからね」

「…………(なんでいつもこうなるッ)」

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