小さな悪魔
尚も辱めの危機が迫るモナだったが、その手がモナに届こうという時にある異変が起こる。
モナに光りが纏わりつき傷口が癒えると同時に、モナの周りに結界が張られたからだ。
「これはこの雀が使ったのか?」
「あり得んだろ、大方こいつの主人の魔法に違いない」
「ははは……そ、そうだよな雀がこんな魔法使えるはずないよな」
「はーい! そこの人スズは結界魔法も回復魔法も使えるからねー」
「リ、リィナさん冗談ですよね?」
「冗談言ってもしょうがないでしょ……正真正銘スズちゃんの魔法だよ」
先程までの騒ぎから今度は嘘のように静まり返る会場だったが、次の瞬間に阿鼻叫喚と化した。
モナの傷を治していたスズが攻撃を始めたからだ。
攻撃を始めたスズの魔法はエグイ物ばかりで、ウインドカッターとか酸の魔法アシッドスプレーと言った物で、切断だったり、酸で溶かしたりを所かまわずに容赦なく行っていた。
そんな事をすれば当然体が切断されたり、体が溶けたりといった惨状となるわけで、それを見る羽目になる観客達がいる会場の方では悲鳴や絶叫で満ちていた。
この想定外の出来事は流石に不味いと思ったのか、東の国の王と西の国の王が会場にいる審判になにかしきりに伝えようとしていた。
だが、地獄の様な現場にいる審判は王達が指示しようとする様子など見ていられる筈もなかったのでそのまま試合は続く事となる。
因みに王達よりも必死なのは、この惨状の真っ只中にいる召喚士達で、スズから必死に逃げようとしていたのは言うまでもない。
「くそっ兎に角逃げねえと!」
「そんな事よりも降参だ」
「こんな事ならあんな愚王の頼みなんか聞くんじゃなかった」
様々な事を口にして逃げている召喚士達だったが、ある物に阻まれて逃げる事が出来なくなった。
スズの結界魔法だった。
ただその規模は異常な物で戦場となっている場所を覆い尽くして、召喚士達を結界の外に出せない様な仕組みの物だった。
「結界魔法が張ってあるぞ!」
「ま、まさかこれもか?」
「さっきも結界魔法使ってたが、ここまで大規模な物を同時に?」
「あーあー! マイクのテステス! 最初に降参した方が良いよって言ったよね?」
「わ、分かった! 降――」
「「「――っ!?」」」
「リ、リィナさん! これまさか?」
「あ~うん……想像の通りだよ」
ローズはこの光景に見覚えがあった。
それはセラの魔法の試合の時と同様の光景だったからだ。
「それにしても……いくつの魔法を同時に使えるの?」
「私が知ってる範囲だと6個までは使ってるの見たことあるよ」
「今発動してるのだって、結界魔法、回復魔法、攻撃魔法二種類、結界魔法、沈黙魔法それも規模的に全部おかしいレベルじゃない!」
このローズの発言に会場の観客達の口からある単語が出てくるようになった。
「あ、あれは悪魔じゃ」「そうじゃ悪魔に違いない」「悪魔よ」
「おせんにキャラメル~ドリンクはいかがっすか~」「悪魔だ!」
「まるで小さな悪魔ね」「ビールに焼き鳥もあるよ~」
スズの出現によって大会が終わりへと向かいつつあった。
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