ピンチに現れたのは……

 四聖獣の三体と他の召喚獣も相手に立ち回るモナだったが、流石に自分の強さに自信を持っているだけあって、多勢に無勢にも関わらずに互角以上の戦いを繰り広げていた。

 多数相手がいるにも関わらずにモナが上手く立ち回れているのにはいくつかの理由があった。

 まず相手の連携の精度が低い点にあった。

 他の国の召喚士達は、召喚獣の強さに胡坐あぐらをかいていたのだろう。息の合った動きが出来ていないのだ。

 その穴を突いて攻撃、バフ、デバフ、回復と場面によってきっちり使い分けている為にモナと朱雀は数に対して互角以上に戦えていた。


「モナ選手と朱雀つよ~い! 相手の数を物ともしないで息の合った連携プレイで相手をかき混ぜ攪乱してる。それに引き換え相手側は人数がいるのにグダグダだ~!」

「確かにモナさんと召喚獣の朱雀の連携は見事ですね、対して相手側は連携が出来てません。この差が今の状態となってますね」


 圧倒的に不利な中でも、上手く立ち回って互角以上に戦えていたモナだったがここで流れが変わる出来事が起こる。

 そう、それはゲインの相手をしてた召喚士達が合流した事である。


「ゲインはやられちゃったか……流石にこの状況は不味いわね」


 互角以上に戦えていたモナだが、流石にここでの人数の増加となると対処のしようがなかった。

 連携の精度が優れているといっても、それは圧倒的な数の前ではどうしようもないからだ。

 実際ゲインのところから来た召喚士達が合流した途端にモナは被弾が多くなっている。


「汚いぞ!」「卑怯者共!」「流石に酷いよ」


 この状況には流石に観客も物を投げ入れたり、この状況について抗議の声が上がり始めた。


「万事休すね……でも!」


 ここから、モナは暴れに暴れるが、その抵抗も空しく拘束魔法によって捕まえられた。


 そこから先は酷い物だった。

 意識がなくなるまでモナを甚振り続けた挙句に公衆の面前で召喚士達はモナの衣服を剥ぎ取ろうとしていた。

 当のモナだが、ぐったりしたままで意識を取り戻す様子はなく、辱められる寸前だった。


「これは酷い! こんなのを許していいのか皆の衆!」

「あの……リィナさん言ってる事はあってるんだけど皆の衆って」


「こんなの試合じゃねぇ止めろ!」「ここまでする必要があるの?」「各国の王達はこれを容認するのか?」「いいぞ!」「もっとやれ!」


 リィナの言葉を受け観客が試合の中止を求める声が数多く上がるが、その中に容認する発言をする者もいた。

 そんな混乱した状態でも試合は審判に止められる事なく続いた。


 モナが辱めを受けそうなそんな時だった。

 一羽の雀がモナの肩へと飛んできた。


「ちゅんちゅん」

「ん? 雀? なんでこんなところに雀が?」

「あ~あ……スズが来ちゃった。選手のみんな~降参した方が良いよ~」

「えっと……リィナさんあの雀は?」

「あれはね~セラちゃんの召喚獣だよ」


 リィナさんの言葉に召喚士達は腹を抱えて笑い出したが、それにはローズも同じ様に笑っていた。


「ぶはははは! こんなちっこい雀に何が出来るってんだよ」

「そうだぜ! 馬鹿じゃねえの?」

「雀が召喚獣って何かの冗談だろ」

「リィナさん流石に冗談が過ぎますよ」


 スズを馬鹿にする声に対して頭に来たのか、冷たい表情でリィナさんが呟いていた。



「……スズちゃんを馬鹿にしてると死ぬよ」

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