ゲインの死闘

 モナが他の国の聖獣と召喚士達を相手をしているその時、ゲインもまた他国の召喚士達と召喚獣に囲まれて死闘を繰り広げていた。

 尚……この戦いは、リィナもローズも実況も解説もしない寂しい戦いであった。

 そりゃ四聖獣と普通の召喚獣じゃ四聖獣の方が目立ってそっちを実況や解説が気を取られるから仕方ない。


「くそっ! 群がりおって! 行けバーンズ!」

「グルルァァ!」


 ゲインの使役するワイバーンが辺り一面に火炎のブレスを放つが、かわされたり、ブレス自体を防がれてしまう。

 勿論ブレスで戦闘不能になる召喚獣と召喚士はいたが、かなりの人数は無事だった。

 だが、これは仕方のない事と言えるかもしれない。

 多勢に無勢というの事もあり、普段なら細かい指示と自分の補助等も絡めて戦うところを多数を相手にしなければならない状況。

 そんな中で出来る事は手当たり次第に攻撃するしかなく、ゲインの選択肢は極端に狭められていたからだ。

 その狭められた選択肢というのは相手からしてみれば余裕を持って対処出来てしまう。

 つまり状況的にはゲインはほぼ詰みの状態と言ってもいいだろう。

 ゲインは召喚士の方でも経験豊富ではあり召喚獣にも恵まれてはいたが、多数の相手との戦いには慣れていないというのも、追い詰められる一因ではあった。

 これが、南の国でトップのモナであったなら、追い詰められるどころか逆に追い詰める事は出来ただろうが、ゲインには其れは出来ない事だった。


「はははっ! こいつ噂に聞く程強くないぞ」

「多数で相手とは卑怯な!」

「これはバトルロワイアル方式だから、卑怯なんかじゃねえよ」

「それにしても、この爺中々粘るなこの人数相手でも落ちやしねえ」

「あぁ……何人かやられたし強い事は強いな」


 言いたい放題されているゲインだったが、南の国の召喚の名門という自負があるのか未だに召喚獣と共に戦い続けていた。

 ……だが、その頑張りに終わりが来る。


 ゲインの召喚獣のバーンズが凍結魔法で動きを止められ集中攻撃を浴びて戦闘不能になると次の標的はゲインとなり、召喚士達は召喚獣を使い必要以上にゲインを痛めつけていた。


「く、くそ……ここで……ここで終わるのか」

「さて、あの召喚獣バーンズを始末したらあっちの手伝いに行かないとな」

「そういや、あっちは女二人だったな裸に引ん剝いて晒し者にしてやろうぜ! うちらの王様もは必要って言ってたしな」

「ま、待て……セラには手を……出す……な……ぐぶっ!」


 ゲインの腹を蹴り上げる対戦相手の召喚士


「しつけえよ!」

「さっさとそのワイバーン殺しちまおうぜ」

「よ……せ!」

「はいっドーン! ひゃっはっは! ワイバーン死亡~」


 一人の召喚士が召喚獣に指示を出すと、バーンズは召喚獣の風魔法でズタズタに切り裂かれて絶命してしまった。


「バ……ンズ」


 召喚士達は一人と一体が動かなくなったのを見ると次の得物である、モナとセラのいるであろう場所へと向かって行くのだった。

 そして、召喚士達が去って行ったその場所では寄って集って痛めつけられたゲインと、風魔法で命を奪われたバーンズの一人と一体が打ち捨てられていた。


「……様」



 ……意識の混濁しているゲインの傍に誰かの気配があった。

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