セラの動揺と大会の終わり

 ――時は少し遡りスズが大暴れする前の事


 モナと他国の召喚士の戦いに会場全体が注目している隙にセラはゲインの戦いをこっそり見に行っていた。

 親子の関係はほぼ断たれたわけだが、セラはなんやかんやあっても、父であるゲインの事が心配になっていたのだ。

 そして心配になり様子を探っていたセラはその場で大いに動揺する事になる。


 それはゲインが追い詰められた時の事だった……


「く、くそ……ここで……ここで終わるのか」

「さて、あの召喚獣バーンズを始末したらあっちの手伝いに行かないとな」

「そういや、あっちは女二人だったな裸に引ん剝いて晒し者にしてやろうぜ! うちらの王様もは必要って言ってたしな」

「ま、待て……セラには手を……出す……な……ぐぶっ!」


 このゲインの言葉にセラは激しく動揺した。


(嘘……私を疎んじていて私なんかどうでもいいんじゃなかったの?)


 ……だからこそ呆然とした。

 ……愛情の一欠片も残っていないと思っていたから


 勿論ゲインの発した言葉の真意までは分からない、けれどその言葉はセラの心を搔き乱す程の衝撃だったのは言うまでもなかった。

 暫く呆然としていたセラがゲインに覚束ない足で向かっていったのは、召喚士達が去って行ってからだった。




「……様」


 ポツリと呟くとヒールをかけた後は何をするでもなく、ただボロボロになったゲインの傍でセラは佇んでいる。

 表情からは、セラが何を考えてるかもわからないが、ただ複雑な表情でゲインを見ていた。


(あははは……私どうしちゃったんだろうな? もう割り切ってた筈なのに……)


「……すまな……い」


 意識は取り戻していないが、譫言うわごとですまないと繰り返すゲイン……


(父様……そのすまないは、何に対してのすまないですか? 武闘大会で活躍できない事に対する事ですか? それとも……やめよう期待しちゃダメだ……)


 心は依然として搔き乱されたままだったが、セラは一つだけやるべき事をやるべく動き出した。



 ――モナのところまで戻ると


 そこでは既にスズが殆どの召喚士達を倒し終わり、残すところ四聖獣を操る召喚士くらいしか無事な召喚士はいなかった。


(私が手を下すまでも無かったか……)


「いつの間にかいなくなっていたセラちゃんが現れたぞ~これはもう南の国の勝利は確定か~」

「スズありがとうね、後は私がやるからのんびり休んでて」

「ちゅん♪」

「さて……ここからは私が相手をするけど、降参するなら見逃してあげるわ」


 どうやら残った召喚士達は降参をするつもりがない様子だった。


「そっか……今日はちょっと相手にするが億劫おっくうだから、さっさと終わらせるね」


 そこから召喚士の腹部に強烈な一撃を食らわすという作業を三回繰り返すと、立っている者はセラとスズだけという状況になった。


「お~っと! これで立っているのはセラちゃんだけになったぞ! 強い強すぎる」

「強すぎますね、というかこれルール的にセラさんがいた時点で何処の国も勝てないような気がするんですけど」

「確かにそうだね~召喚士の戦いは召喚士の魔法も攻撃も使用可だから、魔法でも格闘でも飛び抜けてるセラちゃんが入った時点で終わるよね~」

「あっ! 隠れていた審判が出て来てセラさんの勝利を宣言しました!」



 こうして長引きそうだと思われた最終戦は案外あっさりと終ったのであった。

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