密談

 案の定というかセラの試合後に前日と同様に棄権者が続出してしまった為に、結局この日の格闘部門も終了になってしまった。

 この異常な結果には、流石にどの国も(南の国を除く)一人勝ちされて面白くない。


 ――格闘部門終了後


「北の国の女王ローズよ。東の王デーブ様がお呼びです」

「……不躾ですね一体何用ですか?」

「それはここでは申し上げられません」


 訝しむローズだが、無下にする事は出来ず仕方なくデーブの呼びかけに応じる事にした。


 ――コンコン


「デーブ様……北の女王ローズ様をお連れしました」

「ご苦労……ローズ様どうぞお入りください」


 入る事を促されたので部屋に入ると、そこには西の国の王ジンエ・タカサカもその場にいた。

 そしてこの場に南の国の王ノヴァがいない事で大体察する。


「デーブ様……この度の呼び出しは一体どういった物ですか?」

「いや……なに別に大した集まりじゃあございません」

「そうですか、でしたら私はこれで」

「あぁ! お待ちください。今回の大会についてお話したいのです」


 南の国に対して不利な条件でもつけようという腹積もりなのだろう。


「どうせ南の国に不利な条件をつけようって話でしょう?」

「ご明察……流石ローズ様ですな」

「そんなくだらない用件で私を呼んだのですか?」

「くだらない用件だと! 我が西の国のコゴロウが再起不能になったのだぞ」

「こちらも優秀な魔法使いが潰されましたからね、くだらないは言い過ぎでしょう」


 ジンエとデーブは自分達の国の人間がした事を棚に上げて、今また大会で何かを企んでいる事にローズは心底呆れていた。


「はぁ……まあいいです。それで用件は?」

「大会の最後をバトルロワイアル形式に変更しようと思います」

「……それで?」

「最後に残っていた国が今回の武闘大会の優勝国となります」

「観客たちはそれで納得できるでしょうか?」

「そこは面白いになるならば納得するでしょう」


 その言葉にローズは引っかかったのか、デーブにどんな思惑なのかを聞き出そうとする。


「それはどういう意味でしょうか?」

「つまりデーブ殿はこう言いたいのでしょう。我々の国の選手達全員で南の国の選手を潰そうという意味でしょうな」

「ほほほ……話が早くて助かります。ジンエ様の仰る通りです」

「私がその様な卑劣な真似をするとでも?」

「……我が国への借金」


 ……その言葉にローズは反応する。


「……」

「今回の件に加わっていただけるなら、それだけで借金はチャラにしましょう」

「口約束だけに――」

「――おい! あれを持て!」


 デーブが持って来させたのは一枚の証書だった。


「……これは」

「この場でこれをローズ様にお渡ししよう。如何にでもされるがいい」

「……今回の件に加わりましょう」

「そうですか、きっとそう言ってくれると信じておりましたぞ」


 唇を嚙みしめているローズを陰から見ている者が居た。



「……これは急ぎ我が主にお伝えしなけばならぬでござる」

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