剣鬼コゴロウvsセラ
「……フリード」
「すいませんノヴァ様……」
フリードの手を取り労うノヴァの姿に会場は涙した。
この美しい主従関係に涙しない人間はいなかったのだが……
ここでこのシーンをぶち壊す人間が再び現れる。
「ヒール!」
マーリンの時と同様に怪我があっという間に治る。
その光景にまたしても呆然とする会場にいる観客とノヴァと西の国の人間達……
「あのなぁセラ……もうちょっと空気をだな」
「……」
「……セラ?」
「あっちゃぁ……西の国の人間は馬鹿なのかなぁ? 初日に東の国の人間がどうなったか覚えてないのかな? それともセラちゃんを甘く見てるのかな?」
「リィナさん……セラさんはやっぱり」
「……うん」
「やっぱり試合が終わってからのあれですよね?」
「……そだね」
「「はぁ……」」
溜息をつく実況と解説の二人は西の国……正確に言うと剣鬼コゴロウの愚かさを嘆いていた。
付き合いの短いローズですら、この後の西の国の剣鬼コゴロウの結末がなんとなくわかった。
「リィナさんこの試合どうなると思います?」
「考えたくなーい!」
「あ……ところでセラさんの魔法が凄いのは前回の事で分かったんですけど、近接戦はこなせるんですか?」
「あーそれなんだけどね、ローズちゃんはアマルティアって知ってる?」
「えっと……危険度★★★★★★★でSランク以上と言われるあのアマルティア?」
「セラちゃんはね、それを飛び膝蹴り一撃で気絶させるくらい強いよ」
「飛び膝蹴り⁉ あの……リィナさん話を盛ってません?」
「盛ってないって! 私もその場所にいたもん」
「はい!? その場にリィナさんもいたんですか?」
「ん……商人のハンスさんも一緒だった」
「待って待って、ハンスって大商人ハンス?」
「――そんな事よりローズちゃん試合始まるよ」
実況と解説の二人がセラに関して色々話してる間に、リングにセラとコゴロウは上がり試合が始まろうとしていた。
「セラ対コゴロウ戦いよいよ始まりますね、剣鬼コゴロウはダイゴロウよりも強いという話があるくらいですから、魔法と違い苦戦すると思いますがどうでしょうかリィナさん」
「ぶっちゃけ試合にならないと思う」
実況と解説から聞こえてくる声を観客は逆の意味でとらえていた。
観客はリィナの言う「ぶっちゃけ試合にならないと思う」はセラがコゴロウにあっさり負けて試合にならないと思ったのだ。
観客達は、試合前に話していたセラにまつわるアマルティアの話を聞いていないからそれは当然の反応と言えた。
「剣鬼コゴロウ対セラ戦……始め!」
その合図と同時にセラは一瞬のうちにコゴロウとの距離を詰めたかと思うと、直後に鈍く重い音が響き渡る。
その鈍い音が出た後はコゴロウを一顧だにせずセラはリングから降り始めていた。
「……あの、試合放棄ですか?」
「……」
これには会場全体が騒然とする……がすぐに会場からはブーイングの嵐となる。
「ふざけんなー!」「戦わないで終わりかよ」「まあ相手は剣鬼だぜ仕方ないだろ」
色々な声が上がる中で勝者の名前が告げられる。
「勝者! コゴロウ」
「……」
ドサッ……
勝者であるはずのコゴロウが倒れ辺りは静まり返る。
「大丈夫ですか? ――ひ、ひぃっ!」
審判が駆け寄り起こしたコゴロウだが、両腕がグチャグチャになっており、一目見ただけでも二度とその機能が戻らないのが見て取れた。
……ややあって
「勝者……セラ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます