ハンスとゴンザレス

 衝撃を受けすぎた家の一件からしばらく時間が過ぎた。

 今はセラさんに使っていいと言われた部屋で執事長のゴンザレスと寛いでいる最中だ。


「それにしてもセラ様は不思議な方でございますね」

「そうですね、驚かされるばかりです」

「戦闘もこなしたかと思えば、収納魔法、建築技術、製作技術、作製技術に精通……いや、工房や錬金術工房があるといってましたから、恐らくその辺も……」

「ゴンザレス。お前はあの少女をどう見る?」

「そうでございますね……目にした物だけで判断しますが、どれも飛びぬけた才ですね、この部屋の調度品だけとっても一流の職人レベルでございます」

「ふむぅ……やはりそうか」

「ところでハンス様。セラ様の事はどうなさるおつもりで?」


 私は暫く思案した後にゴンザレスに尋ねる。


「彼女とは協力関係を築きたい。その為に恩をきちんと返した上で信頼関係を築きたいのだが、ゴンザレスはどう思う?」

「それは良い考えだと思います」

「ただ難点はセラさんが規格外過ぎて関係の構築が難しそうな点だな」

「そうでございますね、困るという事がなさそうですからね……」


 ゴンザレスとそんな話をしてるとドアがノックされる。


 ――コンコン!

 ――ガチャ!


「ハンスさん。ゴンザレスさん。夕食の支度が出来たので一緒に食べませんか?」

「セラさん夕食までいただいてよろしいのですか?」

「勿論です。一緒に食べましょう。もう南の群狼の皆さんは集まってますよ」

「それじゃあ私達もご相伴しょうばんにあずかろうか。行こうゴンザレス」

「はい、ハンス様」


 セラさんについて広間へ行くと、セラさんの言っていたように南の群狼の皆さんが待っていた。

 それにしても、テーブルの上一杯に並べられ卓を彩る食事は見た事がない物ばかりで驚愕した。

 それは悪い意味ではなく香りからも美味と思わせ、料理の見た目の美しさからの感嘆の意味での驚愕だった。


「これは……なんという」

「ええ、こんな素晴らしい料理は屋敷の料理人でも作れません……」


 セラさんの料理はとても素晴らしく、私の屋敷で雇っている一流の料理人をも越えるほどの品々だった。


「セラさん。とても美味しい料理でした」

「とてもおいしゅうございました」

「お口にあったようで良かったです」


 

 素晴らしい食事から少し時間が過ぎ、部屋で寛いでいるとまたセラさんが訪ねてきた。


 ――コンコン!

 ――ガチャ!


「ハンスさん。ゴンザレスさん。お風呂にお湯を入れましたのでよろしければ」

「お心遣い感謝します」

「私もよろしいのですか?」

「ゴンザレス折角だお心遣いに甘えようじゃないか」

「それではこちらがお着替えになります。それから衣類ですが脱衣所の籠にお入れください。こちらで洗濯をしておきますので」


 

 お風呂に行き入浴してた二人にそこで一つの謎が生まれる。


「ゴンザレス。湯船のお湯……これはどうやって入れたと思う?」

「皆目見当が……いや、この魔道具を使ったのでは?」


 ゴンザレスが指差した先には、金属で作られたであろう魔道具があった。

 それは湯船の上にあり、これを使ったであろうと想像は出来たが仕組みまではさっぱり分からなかった。


「それにしても、ここまで至れり尽くせりだと悪い気が」

「そうでございますな……」


 食事に続き入浴も満喫した二人は、風呂から上がり脱衣所へ戻る


「これを着ればいいのか、ゆったりして手触りが良いな」

「素材は何を使ってるのでしょうか……おや?」

「どうした?」

「ハンス様。私達の着てた服が……綺麗になって畳まれてます」

「「……」」

「部屋に戻ろうか……ゴンザレス」

「はい、ハンス様」


 二人はもう考えるを止めた。

 そして部屋に戻りベッドで横になると二人で一緒の事を口にした。


「「驚きしかねえよ……」」

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