規格外の少女セラ

 ゼン達はモンスターから素材を剥ぎ取り、ハンス達は馬車の荷物を整理して再びジザール村への移動を再開した。


「それでは引き続きジザール村までお願いします。セラさんここからよろしく」


 ジザール村までの移動を再開した一行だが、その日は野営に入るまでは特に何事もなかった。

 だが野営の準備に入るところで一行はセラの規格外っぷりをまたしても見せつけられる事になる。


「今日は日が傾いてきましたから一旦ここで野営をしましょう」

「はい、それじゃあ俺はその辺の見回りをするから、カールとダノンは食料の調達と薪集まきあつめを頼む、リィナはかまどを作っておいてくれ」

「それじゃあ私は家を出すね」


 突然のセラの発言に一同の頭に「?」が浮かんだ。

 だが、次の瞬間にセラの発言の意味を理解する。


 セラのスキルのアイテムボックスでとんでもなく大きな家が一軒丸々呼び出されたからだ。

 通常アイテムボックスというスキルはそこまで大きな物が入れる事が出来る筈がない。

 その理由の一つは魔力の消費が関係している。

 小さな物であるなら魔力の消費が少ないのだが、入れる物が大きくなればなるほど、しまったり出したりする際に魔力の消費が大きくなるからだ。


 セラを除いたその場にいる全員が「な、なんじゃこりゃー」と声を揃えて驚きの声を上げる。

 アイテムボックスの性質を知ってるからこその反応だった。


「私が作った家だけど?」


 その言葉に「作った家?」とそこでも首を傾げられまた驚かれる、アイテムボックス以外にも作った家にも驚かれる(なんで?)


「あ、あの、これセラさんが作られたのですか?」

「そうだよ。お風呂とかトイレも作ったよ」


 そういうとその場の空気が固まる、一様に口をパクパクさせて変な顔になる。


「お風呂とトイレを見せていただいても?」

「うん。いいよ」

「一流の職人が作った様な仕上がりだぞ……これ」

「そんな事より、ここ(トイレ)で話すのもなんだから皆さん家の中へどうぞ」


 家の中に案内された一同は……以下略。


「凄い高そうな家具ばっかりですね……」

「こんな高級な調度品ばかりあるなんてセラさんは良いところの令嬢なのですか?」

「……あの、それお手製ですが……ってなんで皆さん無言になるんですか!」


 無言になる理由は幾らでもあるが、もう誰もツッコめなくなっていた。

 そして考えるのを放棄したのか別の話題に切り替えようとすらしていた。


「あ、あの、図々しいお願いになるのですが、今日はこちらに……」

「ええ使っていただいて構いませんよ。そのつもりでお呼びしましたし」

「ええっ本当に良いの? セラちゃんありがとう」


 逸早いちはやくこの状況に順応したのか、将又はたまた考えるのを放棄したのか、この家で休める事をリィナが喜んでいる。


「ああ、でもここから見て右手にある二部屋は入らないでくださいね、工房と錬金工房になってて危険な物がありますから」

「工房?」

「錬金工房?」

「ねえねえ、セラちゃんって何者なの?」

「え? 旅人ですが?」


一同は心の中で思った「そんなわけないだろ」と……

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