一人と一羽の生活風景

 セラの生活環境が変わってから、早くも五年の月日が過ぎ、セラは十歳になっていた。

 この頃になるとセラは、多数の魔法やスキルを有しており、裏山に出て来るマーダーグリズリーといった凶悪なモンスターも楽々と倒せるようになっていた。


 マーダーグリズリーというのは、危険度が星★★★というかなり危険なモンスターで、十歳の子供と召喚獣には到底討伐できるモンスターではないのだ。

 これがどれ程危険なのかというとCランク冒険者(冒険者で言うなら一人前)が数人がかりで倒せるほどのモンスターと言えばわかるだろう。


 そんなマーダーグリズリーとセラが今丁度対峙していた。


「あーまたこの熊か、あんまり美味しくないし相手にするのが面倒だから出てきて欲しくないんだよね、スズ悪いけど相手して貰っていい?」

「ちゅーん!」


 五年前と全く大きさも変わらないスズと、マーダーグリズリーとの戦いになる。

 普通に考えれば手のひらに乗るような雀のスズとマーダーグリズリーとが戦えばスズが勝てる筈がないのだが、結果は全く違った。

 まず本来は雀が恐れる筈なのにマーダーグリズリーが雀に恐れるという状況になり、そしていざスズがマーダーグリズリーと戦う段になると、マーダーグリズリーは本能から理解するのか、恐怖のあまりにじりじりと後退する。


「……グルルルル」


 戦う意思を放棄し背を向けて逃げるマーダーグリズリーに、スズは突進するとそのままマーダーグリズリーの心臓のある部分を突き破る。

 心臓を失ったマーダーグリズリーは絶叫と共に絶命する。


「ありがとね、スズ」

「ちゅちゅん♪」

「あんまり熊肉は嬉しくないけど無駄には出来ないよね」


 そういうとセラはマーダーグリズリーを魔法で収納し、近くにある川まで持ち運んでいく。

 そこでマーダーグリズリーを収納から出し川に漬けると手慣れた手つきで解体を始めた。


「さて、血抜きした肉、肝、掌、爪、骨、毛皮を収納っと全部位使えるから便利には便利か……それにしてもスズも随分強くなったね」

「ちゅん!」

「前はスズだけじゃ勝てなかったのにね、本当に凄いねスズは」

「ちゅんちゅん!」

「さて、それじゃあ今日は山小屋に寄ってこうか、色々素材とかお肉も取れたしね」



 ――裏山中腹にある山小屋へセラは向かう。


 この山小屋はセラのお手製で、外の物や中の物は全てセラが作った物だったりする。

 山小屋の中にはベッド、タンス、かまど、調理台、作業台、燻製器、食器等があり、山小屋の外には、風呂、トイレ、畑といった感じに充実していた。


「よし、まずお肉は燻製にしちゃおう、それから、肉を燻製にしてる間にクマの毛皮の加工をしないとね……後は骨は畑用の骨粉にするっと……やる事が多いね……」


 数時間後に一通りの作業を終えたセラは、食事の為に支度を始める。


「あれっ? かまどひびが……土魔法で修復しないとね、あと火魔法で火をいれてと」


 土魔法でかまどを修復すると今度は調理台で調理を始める。


「この肉はちょっと臭みが強いから、あれを使おうかな? っとまだ魔法収納の中に残ってたっけ? ……あったあった。グリーンペッパー残っててよかった」


 セラとスズはこの五年の間で更に成長を遂げていた。

 そんなセラだが、外では暮らさず、休む時は律儀に家族の居る屋敷へ戻っていた。

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