才能と土台

 ヨシュアとシャロのあからさま過ぎる誘導で、セラとスズは裏山へと向かう。

 普段は屋敷から出る時も使用人に止められているのだが、ゲインとノマの一件以降は、セラが外に出ようと咎める者は居なかった。

 そういう事もあり自由に外へと出る事に出来るようになったセラは、裏山へと木苺を摘みに出歩ける。


 屋敷から出たセラとスズは、ヨシュアとシャロの言っていた裏山にある木苺の群生地を探しあてスズと一緒に大喜びする。


「うわわわ、きいちごいっぱいあるねスズ」

「ちゅん♪」

「そういえば、きいちごのほかにもくだものがあるっていってたよね?」

「ちゅん?」

「えっと……あっ! あそこにもくだものがあるよ」


 お腹が減っていたこともあり、セラは夢中になって果物を食べる、スズにも果物を取ってあげて一緒に食べる。


「スズ、くだものおいしいね」

「ちゅんちゅん♪」


 ――一時間後お腹が一杯になったセラは服を汚してスズと一緒に屋敷へと戻る。


 裏山から戻る道中でセラは夢中になって果物を食べた所為で服が汚れていたことに気付く


「どうしようかな、おようふくのおせんたくたのんでもだいじょうぶかな?」


 先日の使用人達の事を考えてセラは少し躊躇う。

 それでも、服が汚れたままなのは嫌だったので、洗濯メイドに話しかけ洗濯してもらうように頼んだ。


「……ノンナ……あのね、おようふくよごれちゃった」

「……はぁ服を脱いでください、それからこれに着替えてください」


 手渡された服はとても粗雑な布で作られた服で、今まで着ていた上質な布を使った可愛いい物とは全然違う物だった。


「これ、いつものとちがうよ?」

「旦那様と奥様から衣服はこれを渡せと言われてます」

「でも……」

「今着ている服は洗濯しますが、今後大事にしてくださいね、屋敷にいる時は今着た服で外へ出かける場合は渡した服を着てください」

「……はい」

「どうしても綺麗な服が欲しいのでしたら、ご自分で作ってください」

「で、でも、つくりかたがわからないよ」

「分からない事があったなら書庫でお調べください」

「はい……」


 この日以降セラの行動がある程度決まってくる。

 お腹が減れば裏山へと立ち入り、分からない事が出てくれば書庫で調べて学び、必要な物があれば自分で作ったりと、セラは生きるのに必要な技術を恐ろしい勢いで習得していくのだった。

 その中にはモンスターの討伐の仕方や討伐で負った怪我を治す為の技術や魔法も含まれていた。

 カンテミール家の裏山は基本的にはモンスターも少なく安全な方ではあるが、絶対に安全というわけではなく、セラも実際に幾度かモンスターに遭遇し命の危険があったのでモンスター討伐の技術も必然と覚える事となる。

 それら習得した技術(製作技術、作製技術、生活魔法、サバイバル技術、戦闘技術等)は、後にギルドに名を残す程の活躍をするセラの土台となっていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る