セラとスズ
両親や兄姉からは疎まれ、使用人達にも距離を置かれる存在となり、一人孤独となったセラ……
そんなセラは寂しさを紛らわす為に召喚獣を呼び出すようになる。
一度自然に消えてしまってから呼び出せなかったが、何度か呼び出そうと試行錯誤して遂に呼び出すことが出来た。
呼び出すのは儀式の時に呼び出した雀、その雀はセラが呼び出して以降は、寂しさのあまりかずっと召喚し続けている状態だ。
「おなかすいたね、いっしょにごはんたべようか……えっとなまえがなかったね」
セラは部屋の前の床に置かれている二つのパンとスープを部屋へと持ち込み、召喚した雀にパンの切れ端を食べさせている。
「ちゅん……ちゅん♪」
「そうだ! なまえはスズにするね、スズみたいにきれいなこえだもの」
「ちゅちゅん♪」
「パンなくなっちゃった……おなか……すいたな……」
「ちゅん?」
セラは五歳の小さな子供とはいえ、流石にパン二つとスープでは物足りず、お腹が減ったと呟く……
「そうだ! ちゅうぼうにいこう」
そういうとスズを肩に乗せて厨房てってってーと駆けていく、セラが厨房の前へ辿り着くと入り口には、二人の衛兵が立っていた。
セラはそれを無視して厨房へ入ろうとすると……
「待て待て、何処に行くつもりだ」
「……あの……おなかがへって」
「悪いが旦那様にお前を通すなと言われてるんだ」
「……はい」
トボトボと部屋に戻り始めたセラを見て、衛兵の一人が自分の頭をわしゃわしゃと掻く、そして隣の衛兵に少し大きめな声で話し始めた。
「ヨシュア~お前料理得意だよな? 裏山の入口の方に今の時期は木苺が群生してるんだが、あれ採って来るからジャムにしてくれねえか?」
ヨシュアは察して答える。
「あぁ構わないぞ、それにしても木苺か……この時期はそれ以外にも果物が多いから捥ぎたてを食べたいよな、ああでも黒い実だけは気を付けないとな」
「黒い実? ああ木苺みたいなあれか?」
「あれは食べるとお腹壊すからな、シャロお前みたいな食いしん坊は間違えて食べるかもな」
ヨシュアとシャロのやりとりをセラは聞いていた、いや聞かされていた。
「ねえスズ! いまのはなしきいた? うらやまにきいちごがあるんだって、いってみようか」
「ちゅん」
そういうとセラとスズは裏山を目指し駆けていった。
「ヨシュア、すまんな……」
「構わん気にするな」
「それにしても旦那様達はちょっと冷たすぎないか?」
「おい、シャロ滅多な事を言うな」
二人は辺りを見回す。
「だが……」
「お前の言いたい事も分かるがな……」
二人の衛兵はセラの走って行った方を見て大きな溜息をついた。
余談だがヨシュアとシャロは時期が変わる毎に、セラが近くを通り過ぎる度にこの時期の裏山には何があるか等を暗に教えていた。
ヨシュアとシャロの二人は、これをセラが屋敷から出るまでの十年間ずっと繰り返していた。
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