疎まれる存在
ひとしきり泣いて落ち着いたセラが部屋に戻ると、部屋の前にはアンナとアンティの姿があった。
「セラ召喚はどうだった?」
「ねえ、何を呼び出したのかしら?」
「うん! おにいさま、おねえさま、セラはね、かわいいとりさんだったの」
そう聞いてくるアンティとアンナの態度は普段と変わらなかったので、先程の両親の事はすっかり忘れて誇らしげに召喚した雀をアンナとアンティに見せた。
するとアンティもアンナも両親と同じように険しい顔になっていく、そしてセラを汚物でも見る様な目で見る。
「はぁ……カンテミール家の恥だな」
「そうですね、お兄様」
「おにいさま? おねえさま?」
「……お前はもう俺達に近づくな」
「こんなのが妹なんて、いえ、私に妹なんていなかったんだわ」
「……」
両親と同様に兄と姉からも拒絶され、そんな扱いを受けたセラは悲しさから、その日ずっと部屋に閉じこもり泣き続けていた。
――翌日、使用人達を引き連れたゲインとノマがセラの部屋に現れた。
二人の様子と使用人達の様子に怯えるセラ、そんなセラの事などお構いなしゲインとノマは口にする。
昨日の悲しみが未だに癒えていないセラにとって重すぎる事を……
「これからお前は、食事の席や団欒の場に姿を現す事を禁じる、アンナとアンティに近づく事も許さん」
「あなたは私がお腹を痛めて生んだ子ですから、衣食住の最低限は許しますが、基本的に家族の縁は無かったものと考えなさい、屋敷の中の移動も認めますが、私達に近づく事は許しません」
「旦那様、奥方様、セラ様はまだ幼くそのように言っても理解できないかと……」
「……なら、セバスチアン分かりやすくお前が後で言っておけ」
「は、はい……」
五歳の幼いセラにはゲインとノマの話した内容の全ては分からなかったが、それでも少しは理解できる、家族に近づくなということだけは……
「おとうさま、おかあさま……なんで?」
ゲインのこめかみがピクッっと動く
「なんで? ……だと! 我がカンテミール家は代々優れた召喚術師を輩出してきた名門なんだぞ! それなのにお前は役にも立たない鳥なんぞを呼び出して」
「あなた、もう行きましょう。相手にするだけ無駄ですわ」
ゲインの怒鳴り声にセラは泣き出した。
「……う、うわぁぁぁん」
「ふん! 耳障りだ行くぞ」
「はい」
泣き出したセラに使用人の一人が憐れに思いハンカチを渡そうとする。
「お嬢様ハンカチです。お使いください」
だが部屋を出ていこうとしたゲインがそれを見ると……
「おいっ! 誰かこいつを摘み出せ!」
「ひっ! 旦那様。そ、それだけはお許しください、ここを追い出されては生活が」
「なら次からは気を付けろ! 他の者も必要以上の事はするな、もし背けば即この屋敷から出てってもらう! いいな?」
この日のこの出来事以来、使用人達もセラには最低限でしか関わらなくなり、ここからセラは十年もの長い時を寂しく過ごす事となる。
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