侯爵家から追放された召喚少女は冒険者生活を満喫する

北比良南

一章 侯爵家の追放

カンテミール侯爵家

 カンテミール侯爵家は、南の国カントで代々優秀な召喚術師を輩出する一族だ。

 この日そのカンテミール侯爵家に女の子が生まれた。

 

「おぎゃ……おぎゃぁぁっ……ああん」

「可愛い女の子にございます。奥様! 旦那様!」

「そうか、この子は魔力に満ちておるな、おぉおぉ……将来がとても楽しみだ」

「ええ、この子はきっと才能に溢れた子供に育ちますわ」


 希少な魔力鑑定の水晶球を使い鑑定を行うと生まれた女の子は、とんでもない程の魔力を持っていた。


「ねぇははうえ、ちちうえ、なまえはもうきまってるの?」

「きまってゆの?」


 生まれたばかりの子供の名前を聞いた二人の子供は、アンティとアンナ。

 少ししっかり喋る男の子アンティは六歳で、少し舌足らずな感じの話し方をする女の子アンナは三歳だ。


「アンティ、アンナこの子の名前はセラだ」

「「セラ!」」

「まあ二人共そんなに嬉しいの?」

「「うん!」」


 生を享けたセラはこの時は確かに家族に祝福された存在だった……



 ――月日は流れて五年が経ちセラの五回目の誕生日

 

 その日、セラは五歳の誕生日を両親と兄と姉に祝ってもらい幸せだった。

 だが、それも誕生日を祝ってもらったところまでで、お祝いの後に行われるカンテミール侯爵家の習わしである生涯の召喚獣を呼び出す【召喚の儀】により、セラは以降の人生をどん底へと突き落とされる事となる。


 誕生日のお祝いの後に両親に連れられて、儀式の間へと来たセラは、父であるゲインと母であるノマに言われるがままに儀式を進める。

 儀式を進めるとセラ本人と周囲の魔力が凄い勢いで高まり魔力が部屋全体を覆い始める。

 その光景にゲインとノマは大いに期待を膨らませている。


 召喚獣の召喚は魔力の高さによって呼ばれる物が大きく左右される。

 ゲインもノマも、自分の召喚の儀の時とは比べ物にならないセラの魔力の流れから、召喚される召喚獣が規格外である事を疑わなかった。

 だが、そんなゲインとノマの期待を大きく裏切る物が召喚される事となる、それも悪い意味で規格外な物が……

 セラの前に召喚されたのは一羽の小さな小さな雀。

 セラはその雀を手にそっと乗せるとゲインとノマの下へ、てててっと駆け出していく


「おとうさま、おかあさま、かわいいとりさんがでてきました」

「……」

「……」

「おとう――ひっ! おか……」


 今まで一度も怒った事も無く、優しい笑顔だけを見せていた両親が、今は物凄い形相でセラを睨んでくる。

 突然の出来事にセラは戸惑う。


「くそっ! 我がカンテミール侯爵家からこんな無能が生まれるなんて!」

「あなたなんて生まなければ良かったわ」

「おとうさま? おかあさま?」

「ええぃ! 近寄るな無能が!」


 ゲインはセラを突き飛ばしそのまま部屋から出ていく、ゲインが去っていくとノマも続けて去っていった。


「ひぐっ……う、うえぇぇん」


 突き飛ばされた時の痛みと両親の豹変した怖さからセラはずっと泣き続けた。


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※4/19 書き忘れと一部文章の修正しました

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