第9話 放蕩息子のたとえ

マリヤ:私は神から呼ばれて引き寄せられている、教会に通っているクリスチャンです。

ユリ:私はマリヤの幼馴染み、ユリです。ここだけの話、私は昔、新興宗教にはまってしまい、それ以来宗教嫌いになってしまったけど、マリヤの人柄と聖書の話に魅かれて、聖書を勉強中です。よろしく。


マリヤ:今日は放蕩息子のたとえを話すわ。

ユリ:なんだか、聖書ってたとえ話が多いけど、それはどの時代、どの国、どのシチュエーションにも合うから、たとえ話が通用するんだね。

マリヤ:その通り、聖書は二千年以上も昔に書かれたものだけど、時代遅れの古臭い書物などではないの。

ユリ:今でも、聖書は世界のベストセラーだし、ビジネスホテルでは、一部屋ずつ置いてあるわね。

マリヤ:ある人に二人の息子がいました。ある時、次男が父親に「お父さんの財産で、いずれ私が頂く分を今下さい」と言ったの。

ユリ:現在でいう生前贈与ね。それは親が病気のとき、また認知症のとき、はたまた子供がいわゆる前科者になってしまって、分籍といって戸籍が分けられたとき、親が子供の将来を心配して生きているうちに、財産分与するのよね。

マリヤ:なぜ戸籍を分ける分籍をするかというと、やはり身内に前科者がいると、就職や結婚に差し支えるから、いわゆる戸籍上は他人なのよね。

 話を戻すわ。財産は父親は元気な間は、全部父親のものであり、弟息子に分けてあげる必要がないのに、弟息子に生前贈与したの。

ユリ:ずいぶん甘やかしてるのね。やっぱり弟だからかな?

マリヤ:次男は、これ幸いとばかり、かねての計画通り荷物すべてをまとめて、父親の目の届かない遠い所へ行ってしまったわ。

ユリ:父親に感謝するでも、親孝行するでもなし、ずいぶん自己中心な弟息子ね。

マリヤ:まったくの子供のような世間知らずの弟息子は、親から独立して、自由になったと思い込み、放蕩に身を持ち崩して、親からもらったかけがえのない遺産を、湯水のように使ってしまったの。

ユリ:いわゆる今でいう、あほボンね。キャバクラ、ホステスさんのクラブ、ギャンブルなどね。現在とまったく変わりはないわ。

 ある有名ティッシュペーパー会社の社長が、カジノの107億円の借金をつくった話と似ているわ。

マリヤ:ちなみに、キャバクラは延長すればするほど、一時間の単価が高くなっていくの。キャバクラのキャストさんは、そうやってじらすのよね。

ユリ:元をとるつもりで、大金を使っているうちに、どうしてはまってしまう。

人間の悲しいサガね。

マリヤ:人間、嘘だとわかっていても、ほめられたら嬉しいし、ギャンブルでも勝ったときの快感が忘れられず、負けたらまた勝てると思い込み、負けた分を取り戻しにいこうと思うものね。

ユリ:もっとも、私はホームレスを見てきたが、ホームレスの原因はみな、酒とギャンブルだというわ。だから、ホームレスに現金をあげても、ギャンブルですってしまう。トーストをあげても、酒で胃腸や肝臓がやられているから食べ物を受け付けないから、道端に捨ててしまうのよ。

 そこにネズミやゴキブリが寄ってくるという、最悪のケースになりかねないわ

マリヤ:まさに「人はパンのみにて生きられない」(聖書)の世界ね。

 話を元に戻すわ。とにかくその弟息子は、遊びに散在して一文無しになってしまったの。また、そのとき運悪くその地方にききんが起こり、食べ物さえもなくなり、非常に困った状態になってしまったの。

ユリ:ききんとは、いくら種をまいても植物が育たず、土地もすっかりやせてしまって、もう農作物ができなくなることね。いくら、人間が努力しても、芽さえでないのね。

マリヤ:そのとおり。そこで弟息子は、その地方の有力者の所にいって、身を寄せたところ、なんとユダヤ人の嫌っている豚を飼う職業を彼にあてがったのね。

ユリ:豚を飼うって、匂いもひどいし、不衛生だし、誰もやりたがらない仕事ね。

マリヤ:彼は、おなかがすいているので仕方なく、豚の餌であるいなご豆で飢えをしのごうとするほど、落ちぶれてしまったの。

ユリ:豚の餌であるいなご豆って、堅くて到底歯が立たないの。今のドッグフードのようにソフトで、人間用の食べ物に似せたものとは到底違うわ。

マリヤ:かつての遊び友達は、落ちぶれた彼にそっぽを向いて、他人顔するだけで、パンひとつも恵もうとはしなかったの。

ユリ:遊び友達は、自分の楽しみのために、相手を利用するだけよね。たとえば、昔流行った麻雀友達はジャン友というけれど、自分が勝てるためにわざと弱い相手を利用するのね。

マリヤ:そういえば、昔バイト先で、ギャンブル大好き男子とつきあっていた女子がいてね、一緒に旅行までいく仲だったのね。

 しかし、女の子はその男子に、惚れた弱みで賭け麻雀の借金五万円を貸したの。しかも、なんと自分の姉に借りてまで、その男子に尽くしたけれど、返ってこない。

ユリ:五万円というと大金ね。じゃあ、その女子は姉からも借金したということになる。「あなたは姦淫してはならない」(聖書)というけれど、本当ね。

 まあ、金でも物でも貸し借りは、大きな責任問題だからね。

 貸した方は債権者といって「〇十万円弁償して」と言う権利が生じるし、借りた方は債務者、負債者になり、どこまでも負けの立場に陥ってしまうわ。

マリヤ:そしてその女子はなんと、店中に彼いや正確にいうと元彼の愚痴をいいふらしまくってるの。なんと退店した子にまで電話で「食事のときは、お互いが奢りあう。ただし、あいつは私の二倍食べるんだよ」

ユリ:要するにその女子は、食事一人前、奢らせているという勘定になるわね。

マリヤ:愛というのは憎しみになり、そして最後には愚痴を言いふらすようになるわね。この頃は、有名人がネットにまで「四万円貸して返ってこない」と発表(?)する時代だからね。まあ、金や物の貸し借りはするものではないと、痛感させられたわ。


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