第2話 あなたは姦淫してはならない-2

まりや:男の子って案外、照れ屋でシャイなのよね。だから、気になる女の子にわざと反対のことを言ってしまう部分があるの。

 だって、告白してフラれたら傷つくじゃない。まあ、からかいは、傷つけられないための防御策みたいなものね。

ゆり:そうか、アイドルみたいな純粋でシャイな証拠か。

まりや:残念ながら、そういう男の子ほど不倫女性を敬遠するわ。

やっぱり、不倫をしている人って、どことなく暗いムードが漂ってるのよ。

ゆり:それもそうよね。太陽の下でデートできないもの。

常に目立たない地味目の服を着て、まちがってもキラキラのラメのついた服など着れる筈もなく、周りをキョロキョロと見渡して、おおっぴらに笑ったりもできない。

 でも彼はこう言うの。

『君が僕から離れていっても、僕から君を離すことはない』

まりや:呆れた。なんという一方的な都合のいいセリフなんだろう。

要するに、彼はゆりに対して本気ではないという証拠よ。

別の言い方をすると『僕は君がいてもいなくても、ちっとも困らない。あまり、大ごとになる前に離れていってほしい。しかし、僕にとって、今のところでは君は利用価値がある』

まるで都合のいいAIみたいね。要するに、彼は典型的な自己中心。ゆりの将来など何も考えていないのよ。使い捨てのOAみたいにね。

ああ辛い話ねえ。ゆりは一秒も早く、不倫から卒業しなきゃ。

一生不倫体質になっちゃうよ。やっぱり、彼はゆりの身体が目的なのよ。

ゆり:そうかもね。だって彼、いつも繁華街の裏通りを入っていこうとするもの。

裏通りといえば、圧倒的にラブホテルが多いけどね。

まりや:やっぱり、彼はゆりを自分の欲望に利用しているだけに過ぎないのよ。

さあ、二人でお祈りしましょう。イエス様。ゆりは今、口先だけの男に誘惑されています。この悪魔の誘惑からお守り下さい。アーメン

ゆり:えっ、イエス様はこんな私を赦してくれるの?

まりや:大丈夫よ。イエス様はゆりが反省して悔い改め、二度と不倫はしませんと誓えばゆりを変えて下さるわ。

 不倫で幸せになる人は一人もいやしない。お互いの家族まで巻き込むことになるが、なぜかいちばん悪者扱いされ、責められるのは当の女性なのよね。いくら男性から誘惑されたなどと弁明しても、誘惑するように仕向け、それに乗ったのは受け身である女性本人じゃないかと、かえって反論されるのがオチね。

ゆり:そういえば、私の知り合いで長年、不倫をしている女性がいるが、五十代前半で腰も曲がり、足も不自由で、年中ぜんそくのように喉もわずらっているわ。

 神様、どうか私がドツボにはまる前に、不倫から解放してください。

 しかし、まりやってやっぱり頭が冴えるねえ。神がかりなのかな?

まりや:不思議と神を信仰すると、神から力を頂いて真実がわかるようになってくるわ。これも神から送られる聖霊のはたらきね。

ゆり:聞いたことあるわ。聖霊って神から人間におくられる霊の働きでしょう。

霊というものは、実態がないので目には見えず、聞こえず、匂いもしないし、梱包して送ることもできない。しかし、感じることはできる。

まりや:その通りよ。この世には人間の霊と悪霊と神からおくられる聖霊があるの。

健康とは、肉体的健康、精神的健康、社会的健康のほかに霊的健康も含まれるのよ。

ゆり:(まりやとゆりは手を組んで)「ああ、イエス様、もう不倫はしません。

不倫男から解放させて下さい」

まりや:(ゆりの手の上に手をおいて)「イエス様、どうかゆりがイエス様の方向に向きますように。アーメン」

 ねえ、ゆり、将来、洗礼を受けるために準備しようよ。洗礼を受けたら、神はいつまでも、ゆりのそばにいてくれるわ。

ゆり:じゃ、私を教会に連れて行ってよ。Let's go church

まりや:そうね。今週の日曜日、ゆりを誘いに行くわ。そういえば、私が初めて教会に行ったのは、小学校五年の時、クラスメートに誘われたのがきっかけで、いつも朝九時頃に五人グループで待ち合わせて行ったものだったな。

 クリスマスの寸劇の練習もしたのよ。マリアの白い衣装のかわりに、ネグリジェで間に合わせたのを覚えているわ。

 五人グループで教会に残ったのは、私だけだったけどね。

ゆり:そういえば私も一度だけ、小学校の頃、一度だけ親に連れられて教会に行ったことがあったな。なんとなく和やかで、心が落ち着いたのを覚えているわ。

まりや:じゃあ、さっそく今週の日曜日、誘いに行くわ。

神様、感謝します。ハレルヤ


 

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