7.色の数を数えてみる
みんなしんじてくれないけれど、ボクはしっている。
そらには、つきがふたつある。
たしかにボクは、このめでみた。
そらにつきがふたつ、うかんでいるのを。
白いつきと、茶と銀のしまもようのつき。
おとなたちは、つきのことをよくしっている。
むかしはいまみたいに、そらはくもにおおわれていなかった。
だから、そらにうかぶつきがよくみえたそうだ。
おおむかしから、つきはひとつにきまっている。
しまもようのつきだって?
そんなものあるわけがない。
おとなたちは、くちぐちにそういった。
たちどまって、そらをみる。
ふう。
あいかわらず、黒いくもばかりだ。
とおくのほうのくもに、赤いしみのようなもようが、ぽつりぽつりとみえる。
このぶんだと、ボクがとうちゃくするころに、はるがくる。
ボクはふたたび、いしころばかりのやまみちを、あるきはじめる。
こやについたときには、あせだくになっていた。
こんなうえまでのぼったのは、はじめてだった。
こやのなかには、おじいさんがひとりいた。
きょうからこのひとがボクのあたらしいごしゅじんさまだ。
なまえは、うぃざーど。
でも、ふしぎなことに、うぃざーどはボクがみのまわりのせわをするのを、ことわった。
そんなことをさせるために、おまえをひきとったのではない。
そんなことより。
うぃざーどは、こやのまえにぼくをたたせた。
はるはいつくる?
ぼくたちはそらをみあげた。
くもにうかぶ赤いしみはもうすぐそこまできている。
赤がこくなってる。
あそこ。
ボクはゆびさす。
もうすぐ、くる。
しばらくして、くものきれまからたいようのひかりがさしこんできた。
はるだ。
黄いろいひかりがぼくたちをてらす。
うぃざーどはりょうてをひろげて、そらにさしだした。
しばらくすると、はるはおわり、そらはくもにとざされた。
うぃざーどのまんとのなかから、きゅいーんという、へんなおとがきこえてくる。
よし、じゃあ、はるはあとなんかいくらいくる。
ボクは赤いいろのかずをかぞえてみる。
このみっかのあいだに、あとごかい。
よしよし。
うぃざーどは、ボクのあたまのうえに、ぽん、と、てをのせた。
おまえをひきとったのは、おまえのもっているそのちからのためだ。
おまえには、きあつのへんかをしかくかできるのうりょくがある。
おまえのめに赤くみえているのは、こうきあつのちゅうしんだ。
ちかくへんどうでじゅうらいのきしょうがいねんがつうようしなくなった。
でもこれでなんとかなりそうだ。
ボクにはうぃざーどがなにをいっているのか、わからなかった。
でも、どうやらボクはうぃざーどのやくにたっているみたいだ。
ボクのちから。
ボクはうれしかった。
うぃざーどのなまえはうぃざーどじゃなかった。
うぃざーどはうぃざーどではないんですか。
うぃざーどはわらった。
それはきみたちが、かってにそうよんでいるだけだよ。
じゃあ、なんてよべば。
うぃざーどはすこしかんがえた。
つぇりん。
おじいさんにしては、へんななまえだ。
わかりました、つぇりんさま。
いや、さま、はいらない。
それで、きみのなまえは。
すきによんでください、ボクになまえはありません。
またうぃざーど、じゃなかった、つぇりんはすこしかんがえた。
じゃあ、きょうからきみは、てんきよみだ。
てんきよみ?
きみはてんこうをよそくすることができるからね。
じつは、てんきよみっていうたいとるの、うたがあるんだ。
なんかひさしぶりに、うたいたいきぶんだ。
よし、うたおう。
つぇりんは、すぷーんでてーぶるをたたきながら、うたいだした。
しらないことばのうただった。
びっくりしたのは、うたいだしたつぇりんのこえが、おんなのひとのこえにかわったことだ。
それまでしゃがれたおじいさんのこえだったのに。
うたいおわると、つぇりんはまたもとのおじいさんのこえにもどった。
どうだい。
ええと。
ああ、そうか。
これ、べつのくにのことばだからね。
このくにのことばはむずかしくて、おぼえるのにくろうしたよ。
このうたはともだちからおしえてもらったのさ。
これは、すきなひとにおくるうただね。
あめがたくさんふるこのほしで、すきなひととおはなしをしてからねむりたい、そしてはれたあさに、そのすきなひとがわらってくれたらいい、そんなないようだよ。
あめが、たくさん、ふる、ってなんですか。
こんどゆっくりおしえてあげるよ。
いつかこのほしにもまた、あめがたくさんふるときがくる。
そしてそのあと、そらがはれるときがくる。
そらが、はれる。
ほんとうにそんなひがくるのだろうか。
つぇりんはわらっている。
ところで、てんきよみ。
わたしといっしょに、たびにでるきはあるかな。
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