第八膳『孤独を癒すラーメン』

孤独を癒すラーメン 前半

 それは全く突然のことだった。

 平九郎とトモカちゃんがいなくなってしまった。

 にぎやかで明るくなっていた部屋、それが元通りの空虚な空間に戻っていた。


 まるで白昼夢でも見ていたようだった。

『大事なものは失ってはじめてわかる』

 よく聞く話だが、まったくもってその通りだ。

 

「まだあきらめが付くタイミングだっただけマシななんだろうな」

「それに一人の気楽さには慣れてるしさ」

「やっばり他人と生活するのは向いてないのかな」


 気づくとオレは誰にともなく話していた。

 うん。独り言を言うくらいダメージがでかいということだ。

 でもそれを自覚できる程度には冷静だ。


 気づくとすっかり日も暮れ、電気をつけ忘れた部屋は薄暗くなっていた。   

 と、小さく腹が鳴った。

 そういえば昼飯も食べていなかった。


「こんな時でもお腹だけは空くんだよな」


 そうだな、こんな時はラーメンがいいな。

 うん。久しぶりにラーメンを食べたいな。


「久しぶりにあの店にいってみようかな?」


 まぁ時間だけは持て余しているわけだし。


 とりあえず財布をもって靴をひっかける。

 扉を開けると空一杯にオレンジ色が揺らめいていた。

 もうすぐ晩御飯の時間なのだ。


「……平九郎のやつ、お腹すかせてないといいな」


 ⇒ to be continued

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る