第四膳『餃子と共同作業』
餃子と共同作業 前半
自分が好きだからと言って、相手が好きとは限らない。
いや恋の話とかではなく、人間関係の話でもない。
そんな大それた話ではなくて、食べ物の話だ。
平九郎は牛乳が苦手だった。
オレも昔は牛乳が苦手だった。
なのにすっかりそれを忘れちまっていた。
今になって気づかされる。
自分がおいしいと思ったものを人に食べさせたい。
自分が作った料理で人を感動させたい。
オレが考えていたのはそればかりだったのではないだろうか、と。
そこには見えない相手に対する思いやりが欠けていたのではないか、と。
たぶんそうだったんだと思う。
だから料理人としてオレは失敗したのだ。
本当に今さらだと思う。
それでもこうして平九郎に出会えて、それに気づけて良かったと思った。
だから今日はやり直しの料理を作ろうとメニューを決めた。
もちろん平九郎はオレの一方的な事情なんて知らない。知らないままに、オレのエプロンを腰に巻かされて、こうしてキッチンに並ばされている。かなり不安そうな表情、背中の翼もなんだか元気なく垂れさがっている。
「今日はさ、餃子を作ろうと思ってさ。お前にちょっと手伝いをお願いしたいんだ」
平九郎はキョトンと自分のことを指さしている。
そりゃお前しかいないだろ? まったくかわいい奴だな。
「なに、簡単だよ。餃子の具を皮に包むのを手伝ってほしいんだ」
「ボクにできるかな?」
「ああ。ちゃんと教えるから大丈夫だ」
「なら、やってみる!」
そう。たくさん話そう。何が好きとか嫌いとかさ。
どうとしたいとか、したくないとか、なんでもいいんだ。
「餃子はさ、いろんなアレンジができるんだ。餡はもちろん、タレだっていろいろ。今日は二人で究極の餃子をつくろうぜ!」
⇒ to be continued
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