第二膳『カレーの冷めない距離』
カレーの冷めない距離 前半
やっぱり懐かれちゃったかぁ。
まぁオレの人柄というよりは、作った料理のせいだとおもう。
とにかくすごくおいしそうに食べていたから。
だがまぁ、こうしてお土産持参でわざわざ訪ねてきてくれた以上、無下にもできまい。オレも結構ヒマなわけだし。
「まぁ、上がっていけよ」
オレがそういうと、平九郎は嬉しそうに下駄を脱いで部屋の中に入ってきた。
それから少し鼻をひくひくとさせ、何とも言えない笑顔を浮かべた。
だろうねぇ。
部屋の中いっぱいにスパイスの香りが広がっているしね。
そう。今日は朝からずっとカレーを作っていたのだ。
「今日はカレーを作ってたんだ。良かったら食べていかないか?」
「カ、カリー、デスかっ!」
なんでそこだけ本格的?
とは思ったが、平九郎の笑顔は見ていてるこっちまでにやけてくる。
今は内面で葛藤しているのか、やたらと足元と天井で視線を上下させている。
ちなみに背中の白い翼も興奮しているのかなんだか毛がブワッと逆立っている。
「で、ですが、これ以上ご迷惑をおかけるするわけにはまいりませんっ!」
やがてきっぱりとそう言った。
あー、可愛いやつめ!
これはオレ特製のカレー、いや、カリーを食べさせてやらなきゃいかん。
ということでエプロンを巻いてカレーの仕上げに取り掛かる。
もちん平九郎がご飯を食べに来たんじゃないのは分かってる。
図々しいと思われるのが嫌なのも分かっている。
でもカレーの誘惑に勝てる人間はそうそういないのだ。
「実は作りすぎちゃって困ってたんだ。まぁ遠慮しないで食べていけよ」
お腹がグーと鳴る音が『いただきます』の代わりだった……
⇒ to be continued
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