第4話 セル

キファ「こんな所にいるとは珍しいな」

セル「ん?」


ロベリア本拠地の屋上

星空が広がる夜 ロベリアの隊長、セルは屋上にいた。

こんな冷える夜だってのにな……


セル「いや……少し考え事をね」

キファ「過去の話か?」

セル「うん、あの人達がいなければ今の俺はキファ達に会えてなかったかも。」

キファ「だが あいつ等は許されない事をしたんだ。変な気は持つなよ?」


セルは昔、とあるカップルに冤罪をかけられた。そして職場をクビにされロベリアの隊長となった。


セル「どうすれば良かったんだろうね。倒れた女の人なんて放っておいて職場に行けば良かったのかな。」

キファ「セルがやった事は間違ってない、人の命を救ったんだ。それをあいつ等は……」


いつもセルは陽気なのだが今は随分沈んだ表情をしていた

励ましてやりたい気持ちはあるのだが、どう声をかければいいか分からない


セル「あ、キファ この珈琲あげる。冷えるし」

キファ「有難く貰います。」


セルから貰った缶珈琲はまだ温かかった。

缶珈琲の蓋を開け、少量 口の中に入れる


そうしていると屋上の扉が開きスコルピが顔を出した


スコルピ「二人共ー!お客さんだよー!」


二人「……は?」




女性「……本当に申し訳ありませんでした。」


セル「……」


客として来ていたのは過去セルに冤罪をかけた男の彼女だった


女性「どうしても感謝と謝罪の気持ちを伝えたくて色々な人から情報を聞きました。そしてここにいると情報を掴みました。」


セル「ここロベリアは秘密組織の筈だけど」


女性「ルピーさんから聞きました」


セル「あの野郎……」



女性はいきなり席を立ちセルに頭を下げた


女性「私はあの人に辞めてと言ったのですが大金が手に入るからと聞いて貰えませんでした。もう彼氏とは別れています。」


セル「そ……そっか」


女性「セルさんは私を助けてくれました。ですが御恩を仇で返す結果となってしまい、本当に申し訳ございませんでした……」


クソが、虫唾が走る

この女の話を聞いていると苛立ちが収まらなくなった


キファ「あんたなぁ!今更何が申し訳ねぇだ!てめぇらのせいでセルは会社からクビにされたんだぞ!」


セル「キファ、いいから」


キファ「そしてセルは人間不信に鬱病になったんだ!もしかしたら死んでたかもしれなかったんだぞ!」


セル「キファ!!」


キファ「セル!何でこの女に何もしねぇんだ!やり返す時だろ!」


セル「それだと俺も彼氏さんと一緒になるでしょ。悪いのはこの人じゃない、彼氏だ。」


キファ「でも此奴も……!」


セル「キーファ」


キファ「……くっ」


何も言い返せず部屋のドアに手をかける


キファ「前向きなの嫌いじゃねぇけど、過ぎるのも考えものだな……」


そう言って部屋から出ていく

確かにセルの言い分は間違ってないが……


セル「あの……彼も悪気は……」


女性「分かってます、私達がした事ですから」


セル「取り敢えず思ってる事は分かったから……もう帰りな。」


女性「はい……」






クソ……あのお人好しが……

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