第8話

 シャザーレィは強敵だ。

 近距離で振り回す鉄のアームに、硬い装甲。

 そして距離に関わらず撃ってくる光条。


 クレイはよく戦ったが、何度目かの光条を躱しきれず、ついに床に膝をついてしまう。

 容赦なく近づきとどめを刺そうとするシャザーレィに対し、クレイは気合で立ち上がり、睨みつける。


「ここだけは絶対に、死んでも通さねぇ!」


 異変が起きたのはそのときだった。

 アームを振り上げたシャザーレィがその状態で動きを止め、赤いモノアイが素早く点滅する。


「オマエ……ナンダ?」


 目の前のシャザーレィは、明らかに交易共通語を喋っている。

 その事実にクレイは困惑しながら、しかし構えは解かない。

 シャザーレィの言葉は続く。


「ナゼ……カノジョト、オナジ、メヲスル」


「お前喋れるのか? 彼女とは誰のことだ?」


「シンリャクシャハ、ハイジョ……キマリ……ダガ、ナゼ、オマエハ……」


 クレイは会話を試みるが、通じる様子はない。

 剣を握る手に力が籠る。

 状況は分からないが、考えようによっては千載一遇のチャンスといえた。


 防御を捨て両手で剣を持てば、ひょっとしたら硬い装甲を切り裂きダメージを与えられるかもしれない。

 しかし、その考えを実行する寸前、背後の部屋から踊り出る影があった。


「待って!」


「バカ! なぜ出てきた!」


 クレイの叱責には応えず、部屋を出たバニラはシャザーレィの前まで歩を進める。

 彼女の手には、一枚のバーサタイルがあった。

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