第3話
「本当にありがとうね、クレイ。今度なにかお礼するから」
バニラとクレイの2人は、問題のバーサタイルが発掘された遺跡に向かう旅の途中にいる。
クレイは短く切りそろえられた黒髪と、健康的な浅黒い肌を持つ人間の青年で、戦士特有の引き締まった肉体をしている。
そしてちょっぴりハンサムだ、とバニラは思っている。
「お、やったラッキー。行きたい酒場があったんだ。奢ってくれよな」
クレイはバニラの謝罪をいつも通り陽気に笑い飛ばす。
バニラと違い冒険者である彼には、当然自分のパーティがある。
本来こんなイレギュラーな仕事は受けられないはずなのだ。
しかしバニラには他に伝手がなく、冒険者を雇うほどのお金も無い。
それを分かっていて食事くらいの礼で済ませてしまうクレイの優しさが、バニラの心を暖かくさせる。
「でもお酒は2杯までね」
「え~、じゃあ一番安いやつでいいから! なんとか3杯だけお願い!」
「しょうがないなぁ」と言いながら、バニラはつい笑顔になってしまう。
クレイとの会話は楽しい。
でも彼は、同じパーティにいるエルフのシリィが好きなのだ。
彼女はすごく綺麗で、背も高いし、プロポーションも抜群で、2人が並んでいるとまさにお似合いだという感じがする。
それに比べて自分はちんちくりんなレプラカーンだし、マギテックの腕以外いいところなんて1個もないのを自分でも分かっている。
だからきっと、この気持ちは深入りしちゃいけない。
バニラはそっと自分の気持ちに蓋をして、先を歩くクレイから半歩だけ距離をとった。
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