第2話 秘書と謝罪

 社会人になれば、悪くなくても謝らなければならないときがあります。

 医局秘書も例に漏れずそういうときはあります。

 異動になり、某大学病院へ赴任されたばかりの先生から質問を受けました。

 先生方の実績を報告するための書類と、入力する作業があります。

 何故、同じことを二つする必要があるのか、と。

 実はそれはその先生が赴任する前から言われていたことでした。

 先生方も秘書もこの書類出すならこのシステムいらんし、このシステムいるなら書類いらんよね…。とは言っていたのでした。

 しかし、某大学病院に勤めるサラリーマンの私たちには逆らうすべなどありません。

 上から言われたことなのでやるだけです。

 しかし、納得のいかない先生。

 先生「どうして書類を出すのに、このシステムも必要なんですか?」

 私「そうですよね。先生方、お忙しいのにお手間取らせて申し訳ありません」

 先生「おかしいですよね?」

 私「そうなんです。申し訳ありません」

 先生「二度手間ですよね」

 私「おっしゃる通りです。本当に申し訳ありません」

 先生「…。結糸さんが悪いわけではありませんから」

 結糸は医局秘書奥義・相手が折れるまで謝罪を続けるを発動した。

 先生は折れた。

 先生は納得はいかないらしいが、一応受け入れてくれた。よかった。

 私の頭一つ下げたくらいで先生がお仕事してくださるなら、どうということはありません。

 医員の先生方はおやさしいので、こっちが頭を下げればなんとかなりますが、医局長や教授はそうはいきません。

 事務方もそう言う方法はあまり通用しません。

 医局秘書奥義はそう言う意味では、相手を見て使わないとあまり意味がありません。

 先日は、先生のおっしゃることをそうではないと説得しましたが受け入れてもらえず、逆に先生のほうが事務方に確認したら正しかった…ということもあります。

 自分が正しいと思って仕事をしてはいけない。

 常に確認することを怠らなければな。と思った日でした。

 そんなときは、逆に先生に「ありがとうございました。先生のおかげでこのことがわかりました」とお礼を言います。

 謝るのも一つの手段ですし、お礼を言うのも効果的です。

 何にしても、使いどころが肝心。

 言葉って大事ですね。

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