医局秘書日記3

結糸

第1話 秘書とメール

 メールと言うのは恐ろしいものです。一度送ってしまうと取り返しがつきません。あ当たり前ですが。

 先日、竹さんに添付ファイル付きのメール送ったら、医局全員へ一斉送信してしまうというヘマをやらかしました。

 内容はまあ見られても困るものではないと思ったのですが、一応さっき送ったものは破棄してくださいとメールを一斉送信しました。

 しかしA教授には「ああいうのはね…」と注意されました。

 A教授はB医局長と違い、怒鳴ったりはしないのですが圧がすごいです。かなりビビりました。

 仕事柄、一斉送信メールを送ることが多いので次回からは注意しています。

 注意しているのですが、今度は一斉送信メールに添付ファイルをつけて送るのを忘れることもあります。

 急いで添付ファイルをつけて再送することもあれば、「…ま、いっか」と再送しないものもあります。内容による。

 そして再送しなくても、誰も気づかないのか誰も気にしないのかツッコまれません。そんなもんです。再送しないで済むメールなんて。

 あるとき、私が教授以外の先生方にメーリングリストをつくって添付ファイルを送信したとき、H助教から電話がありました。

 H助教「俺、一斉送信に新しい先生のメール登録してないんだよね」

 年度明けは某大学病院と他病院との異動があるので、一斉送信メールに新しい先生方のメールアドレスを登録しなければなりません。

 H助教がいなくなったE助教の代わりにその担当になったのでした。

 まさか、まだ登録されていなかったとは。

 しかし、私が添付ファイルでメールを送ったのは自分で作ったメーリスだと答えると安心されて電話を切られました。

 といっても、一斉送信で新しく来た先生方が入ってないのは困りもの。以前送ったメールや新しく送るメールを送り直したり、CCで入れたり。

 H助教には、新しい先生方のメアド一斉送信メール登録したらメールでもいいんで教えてくださいと伝えました。

 伝えたのはいいんですが、翌日H助教からメールが来ておりました。

「初日から新規の先生方のアドレス登録されてました」

 私「!?」

 えっ…。ちょ、なんですかそれは。

 急いで新しい先生方にメール送り直したり、CCで送ったのは一体。

 ………。

 ……。

 …。

 いえ、いいんですよ。別に登録さえなっていれば。こちらの気遣いなど気にされなくていいんです。

 しかし、誰が登録したんだろう。H助教でなければいったい誰が?

 …医局に妖精さんがいる?

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