第2話 聖竜は歪に想う

とある国のとある聖堂で。聖竜と呼ばれるモノは恋をしていた。己と同じ竜であり、人々は知らぬその存在…【星竜】に。しかしかの竜には番がいる。番とは運命によって結ばれていて、あってしまえばそのものと添い遂げられなければ命を断つ一種の呪いのような…しかし尊い存在だ。だか聖竜に番はいない。彼は星竜が自分の番と信じ込んでいるが、まっったくの見当違いだ。そもそも、星竜の番は【邪竜】なのだ。番以外になびくはずがない。だが彼は妄想し、信じ、私欲に走った。彼は生まれた時から歪な存在だ。白竜でありながら瞳は赤く。ツノは黒い。聖竜と呼ばれるには邪悪な存在でありながら、しかし彼は聖竜とされている。ヒトに支配された竜が行き着く先は一つ。堕ちて落ちて落ち行くことだ。支配するのは<神>ではなく<聖竜>でもなければ<ヒト>でもない、【星竜】のみ、それすら忘れ去った聖竜は想う。そして邪竜に嫉妬し始末を命ず。邪竜が死ねば星竜は己のところに来るはずだと。番を知らない彼はかの銀竜を歪に想い、壊れてゆく。恍惚とした顔で彼女を呼ぶ。彼女は俺の隣にいるべきだ。歪に想い、そして壊れゆく。堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちてその先は知らない。知れない。罪と罰。知らない彼はただ想う。傀儡はいつか罰を受けるなど考えてもいなかった。

愚かな白竜は銀竜を想い続けていた。

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