転生した星竜は元邪竜な婚約者と共に生きる

緋織

第1話 とある竜の記憶

月が輝いている。

美しい夜。

月光を君の黒く透き通った鱗が反射している。きれいな夜。

なのに…それなのに…

君は起きない。いつもボクを暖かく見つめてくれるルビーのような瞳は見えない。

いつもボクに優しく君の綺麗な声を聞かせてくれる口は開かない。

いつもボクを優しく包んでくれるその雄大で優美な翼は動かない。

ねぇ…どうして?キミはボクを置いていくの?それは嫌だ。キミがいない世界なんていらないよ。足音が近づいてくる。頭をあげると彼女を殺したヒトがいた。男が言う。


「おい!トカゲ、その邪竜の死体を俺に渡せ、そうすりゃ何もしねえで返してやるよ」うるさい

「ねぇ…ケイ、こいつの鱗キレイね!私ほしいわ!ケイ、おねが〜い!」

うるさい うるさい うるさい

「あ?チッしょうがねぇなぁ?こいつ殺ってやりゃいいんだろ?ってな!」

…………うるさい

「キャー!ケイ!かっこいいわ!」

「ふんっ!当たり前さ」


こいつら…うるさいなぁ…ボクの【宝物】を壊して…贖罪をしようとすらしない。殺そうかと思ったケド…足りない。魔力が足りてない。今は贖罪させられない。それに…彼女がいない…。それはダメ。だから共にもう一度生まれよう。でもその前に贖罪のチャンスは与えてやろう。


『なぁ…異界の子よ…おまえ達は罪を犯した。それがわかっているのか?』

「あぁ?んだよ!ここはゲーム。罪なんてないぜ?んなもんあってたまるかよw」

「は?罪?何いってんの〜?w」

論外。罰を受けるべき。神が許した?聖竜の神託?しるか、この世界の支配者を忘れたか聖竜。忘れたのか?神よ。神界や地獄すらも関係ないモノを魅せたはずなのに。支配者は


ボク、【星竜】だ。


さぁ、始めよう。転生を。魔法陣が描かれていく。ボクと彼女を中心に描かれていく。ヒトはぼーっと見ている。ノロマ。銀の魔力がボクらを包んで、この体は捧げよう。ボクの体も彼女の体渡しはしない。彼女の全てはボクのモノ。ホカノモノニハワタサナイ。

大丈夫だよ…安心して、キミは何も知らなくていい。罰は全てボクが下す。キミはただ…ボクの側にいてくれればいいんだ。

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