今に不満があるなら、もう一回青春してもいいですか?

満足できない

キーンコーンカーンコーン

「席つけよー早速だがー 転校生を紹介するぞー」

気の抜けた喋り方のおじさん先生が言う

クラスのみんなは当然ワクワクしている

可愛いのか?友達になれるのか?と

まー、俺には関係ないけど。

陰キャはイベントごとに関わらないでいいのは助かる


「お隣さんよろしくね!」

可愛い声が僕に話しかけてくる。

「あッはい!!・・・宜しく」

めちゃめちゃ可愛い・・顔に声 てんしぃ・・・いやいやいや寝ぼけてんな

「さっきの挨拶きいたー?何回挨拶しても慣れないなー噛んじゃった」

ふふふと上品に笑う彼女は笑顔で窓から差し込む日差しと重なり、輝いて見えた。

「ごめん、、きいてなかった」

「そうなの?朝から寝るなんて不良だ!!」

「なんでだよ!よろしく、、えーーと、」

「葉月 いろです よろしくね! ハル君」

長い髪をくくり、ポニーテールの彼女は優等生だと一目でわかる

「葉月さんよろしく。何で僕の名前を?」

机の上を指差してくる

「あー、、ノートの名前か」

ホームルームでみんなの視線を浴びながら来た葉月さんの笑顔は陰キャの俺にはだいぶ眩しく記憶に残っている。



「はる はる! いつまで寝てるの!?」

「何だよ、さっきホームルー、、」

と言いかけるも、隣にいる人を見て正気に戻る。

「もーいつまで寝てるの?寝ぼけすぎよ!?」

「あー、、夏樹か」

寝ぼけた頭をどうにか働かせて答える

「いやー高校の夢見てたよ」

正直に妻の夏樹に言うと

「なになにー?昔の私でも夢に出たんじゃない?」

シシシッと笑う彼女に、夢の葉月いろを思い出す

「やっぱ綺麗だったな。」

するとなつきがむすっとした顔で耳をつまんでくる

「なーにー?まだ今も若いんですけどー!!」

「痛い痛い、、ごめんごめんっハハ」

「よしっ!許す!アイス買ってきて」

夏樹はそう言うと台所に戻っていく。


危なかったー、、勘違いしてくれたみたいだ

椅子から立ち上がり、買い物に行く

「あっはるー! ドレッシングも買ってきてくれない?あと明日の私の分のアイスも」

「それは、夏樹がアイス2つ食べたいだけってのは分かった!行ってきまーす」

夏樹にそう伝えて、買い物にいく。


それにしても、久しぶりに夢みたな葉月イロの今何してるんだろ。

確か、すぐ引越したんだっけ?

美人で明るいから転校する時皆んな泣いてたよーな そんで、告白ラッシュもあったな、隣の席になった俺の運そこで使いきった?

まぁ別に今の生活に不満があるわけではないけど。

コンビニにもう着くそんな時、笑い声と共に女の声がした。

「お兄さん!そこのお兄さん!ちょっと話聞いてよ」

路地裏に少し入った場所、都会の喧騒が似合わない暗く落ち着いた通路から、最も似合わない可愛い声が聞こえる

「そう!貴方です!最近悲しい事、辛い事、嫌な事ありませんでした?」

「えーっと、宗教の勧誘ですか?」

フードを顔が隠れるほどしっかり被った女子高生らしき子が話しかけてくる

「なっそんなモノじゃないですよ!?れっきとしたお悩み解決グッズ持ってきたんですー」

「あぁそういうの間に合ってます。」

頭の痛い子かな? 家出少女とか?まっ問題ごとになる前にいくか

「まぁ気をつけなよ 都会は君みたいな子簡単に誘拐されるって言うから」

自分にしてはキザなセリフだな、なんか恥ずかしくなってきた。さっさと買い物して帰ろ

「相変わらず優しいね!変わってなくて安心したよ、これあげる!またここで待ってるよ、お隣さんっ!」

聞いたことのある声と2つの白い球が付いたブレスレットを渡してきた

「えっ!?葉月さん?っていうかなにこれ!!」

振り向くと、高校生のままの顔した葉月いろが目の前で笑っていた。

路地裏の暗さが彼女の明るさを引き立てるように演出し、路地裏に差し込む光が彼女を照らす

ふふふと笑う彼女の笑顔は思い出のままだった。

「また来てね!私は楽しかったよ」

一瞬タイムスリップしたかに思い目を擦る。


目を開けると、先ほどまでいた女の子は消えていた。

「あれ 葉月さん?」

夢や妄想にしては、はっきりしすぎて現実にしては彼女の雰囲気は過去の葉月いろそのものだ。

夢と現実、過去の思い出の葉月いろがそのまま現実になったかのようだった。


「こわっ」

疲れてんだろうな

寒気と頭痛に襲われ、彼女の可愛さに嫉妬している自分がいてイライラした

「買い物早く終わらして帰ろ」


買い物を済ませコンビニを出る

ーーピキッ

「ん?なんか踏んだか?」

何かが割れる音がして足元を見るが何もない

「まっぶし、、さっきまで曇ってたのにめちゃめちゃ晴れとんなー、、、あっやば!アイス買うの忘れとった」

考え事しすぎてメインを忘れてた

葉月さんのせいだ。

そう思いつつ、振り返りコンビニに戻る

「いらっしゃいやせー」

コンビニで挨拶する店員久しぶりだな

アイスを買おうとアイスの棚にいくと

「うわ懐かしい!!このアイス昔好きだったのに急に無くなったよな、夏樹に買って帰ろ」

アイス2つ持ってレジに向かうと・・・「あれ?」

「2つで200円になりやす」

支払い精算機が・・・・ない、さっきはあったのに店員がトレイを差し出す

金出さない嫌な客だと思われたかな、

「あっ200円か、はい」

「ありやっしたー」


「おいおい!!まさかなまさかな、、?」

普通に考えろ?さっき入った時には店員いなかったよな?後、店内の雰囲気変わりすぎだろ!

精算機無いとか何年前だよ!

ってか待てよ俺学生服だ!

は!?ちょ、夏樹にとりあえず電話し、、パカパカ携帯だ!

うわー懐かしーなーハハッ俺がバイトして買ったんだっけ?っておいおい懐かしいけど

これタイムスリップしてない?


あたりを見渡す

夕焼け空 懐かしい風景 通学用自転車、エモいな

っていかんいかん!何でこんな事になってんだ。

確かに昨日、時を走る女?って映画見たけど、、確かあれ未来人が転校生で、、いやいやとりあえず

「帰るか」

あれ?どこに?まー実家だよな、、

ガシャン スタンドを上げて自転車を漕ぐ

この感じ懐かしいなーっと思ったら、「ちょちょ待ってよー!!」

「えっなっ夏樹!?」

驚いてこけそうになる

それを見て夏樹が大笑いする

「何でおいていくの!ッププ こけそうになってやんのー」

ずっと笑う夏樹に「いいだろ」と呆れた声を出す

「もーせっかく今日部活無いから一緒に帰ってたのに一人で帰るなっよ」

そう言いながら自転車に乗って隣にくる

「帰るよ!それでー来週転校する いろっちのお別れ会のプレゼントどうするか決めよ!」

「あっああそっかそっか、来週お別れ会だったな、、いろっちの」

混乱する頭の中でモヤモヤを上書きするように少しずつ学生の頃、、今の記憶がよみがえってくる


この子は大桐夏樹 俺の嫁、、になる人だ!陸上部で子供みたいに笑う 短髪で結構可愛い

学校ではなかなかモテるがクラスが一緒になった奴は、子供みたいな所がってよく言われてる


そんでいろっち、、葉月いろだ夏樹と仲が良くて

葉月いろはモテる!ポニーテールで印象的で絵に描いたような才色兼備だ

夏樹と幼馴染ってだけで、こんな可愛い子に囲まれるとはけしからんなあ

あっ俺のことか!

「__ねぇ!ハル聞いてる?」

「ごめんごめん、確かいろっちの家でお別れ会だったよな?」

「ったくもー、やっぱ聞いてないよー」

軽く文句を言いながらなつきは続ける

「だからー プ・レ・ゼ・ン・ト!どうする?クラスのお別れ会とは別で欲しいんだけど」

「このプレゼンで鍛えた俺のプレゼントを聞きたいようだな」

そういや俺のキャラどんなだっけ?

「何言ってんの、、、ハルおっさんみたい、、」ププッ

一瞬堪えてから笑う

笑いのツボが浅く、よく笑う夏樹のいい所だ

「まっまぁ 花とか?」

夏樹の笑顔が一瞬にして消える

「プレゼンで鍛えた?はーあ 男ってほんとセンスがないよ」

「待て待って、お別れになるけど三人の思い出になるやつだろ?ってことで!ジャジャジャジャーン ペアリング〜」

「ダッサいけど、、お揃いのブレスレットとかいいね そういやハル! その腕のブレスレット何?」

指摘され思い出す

「あーこれなんだっけかな、えっと確かー貰った奴、、かな?」

未来から来たなんて言えず、歯切れの悪い答えになってしまった

「むー、何ではぐらかすかな、、まぁ関係ないからいいけど ミサンガとかにする?誰かさんがもうつけているから」

「おいおい何で夏樹が機嫌悪くなるんだよ」

「なってない!!」

二人して顔を見合わせ笑い合う

「よし買いに行こ!!今から三人の思い出ミサンガ大作戦」

「はっ?急だな!もう家着くぞ」

「いいのいいから 行くよ!!」

夏樹のこの押しの強さに惹かれたんだっけかな

夕焼けの帰り道

やっぱり学生の頃のこの感じ好きだな


過去に何で俺は来たんだろうか

あの頃の生活に何か不満があった訳じゃないんだけどな?

まーあの葉月いろが言ってた「そう!貴方です!最近悲しい事、辛い事、嫌な事ありませんでした?」

って文言が気になる所だけど


まぁ今はいっか!楽しも明後日の葉月いろお別れ会までは




ガチャッ

「ただいま」

「あんたはまたっこんな時間まで!今何時だと思ってんの!この不良女」

「・・・」

「あんた無視とは、また母さんを困らすんだね。いつもいつもこっち来なさい!!」

「いやッッ!痛いよお母さんやめて!」

「こっちきな!不良女の汚れたあんたを清めてもらわないと。あーぁ汚い汚い」

「嫌だ言うこと聞きますから、お願いお母さん!」

「うるさい」 バシンッ

「や、めて、、よ、、もう、何で、私ば、、かりこんな」







「起きなさい!あんたなっちゃん来てるわよ!!」

カンカン

「ったく、何でうちの母さんは、、起きてるよ!!!」

「なーに文句言ってるんだい!ここまでしてくれる母さんは他にいないわよ。 ほら起きた起きた」

そうだった、母さんはフライパンで起こしにくる漫画のような母さんだ

「なっちゃんに見られる前に早く顔洗いー」

深いため息をつきながら、洗面台に向かうと夏樹と会う

「よっ 相変わらずの元気母さんだねー約束の時間過ぎても連絡ないから、上がらせてもらったのー」

っと朝からうちの様子に笑いながら夏樹が言う

その後ろから、「あっハルくんお邪魔してまーす。」


あっ天使?

いやいやいやいや、彼女はま、まさか

「何で!!いるん、、ですか?」

「ダメだった?」

「あっいや、そんな事ないんだけど、、すぐ準備します。」

「はーい」

葉月いろ、いろっちの私服、普段の学生服もいいけど、大人感が増していいなぁ

最高の朝だけど準備前に会いたくなかった。


「「行ってきまーす」」「お邪魔しましたー」


本日は快晴

両手に花とはこの事だ

右を見れば、大人綺麗The清楚 葉月いろ 道ゆく誰もが一度は振り返る

左を見れば、元気いっぱいの中にある可愛さ、太陽のように可愛い夏樹

「おいハル!!今お前変な事考えてたろー?」

「ヒッ!!」

二人して引き気味に俺を見てくる、、

「失敬な!そ、そんな事ないよ」

「いろっち、今日は一段とこいつやばいよ」

「ナッチャン、ハルくんはいつものことだよね?」

「あっ確かに!」

2人が意気投合する

「本当に俺を貶める時の団結力は凄いよな」

すると夏樹が二人の前に出て、顔を覗き込むようにして

「仲良いからしょうがないよねーシシシ」

「もっちろん!だけどあんまりハルくんいじめたら可愛いそうよッフフ」

「夏樹と違ってイロッチは優しいわー」

夏樹をチラチラ見ながら言うと顔を膨らませ怒る

「いいもん、いろっちさっさと行こ!」

「はいはい、まー確かに少し急いだ方がいいのかもね!ほら、カフェ見て」

イロッチに言われて目的地のカフェがもうそこなのだと気づく、、が「「え!?」」

夏樹と顔を合わせて驚く

長蛇の列!流石 SNSで流行っただけある、フワッフワのパンケーキが美味しいと人気のカフェでほぼ女性でいっぱいだ。

「これに並ぶのかよ、、」

つい口走ってしまう

「あっハル今のはモテないんだー」

「確かに今のはハルくんだめだと思うよ」

「ゴメン」

やっぱり2人が揃うと、標的の的だ

「そ、そういやさ、今日夜本当にいろっちの家行っていいの?」

話題を変えなきゃと思いつつ、今日の予定をもう一度確認しておく

「大丈夫!今日家お母さんいないから」

「まーあ!ハルが!1人はもちろんだめだけど、私もいるかるねー ってか、私も何げに初めて」

「そ、そうね 私もあんまり家に友達呼ばないから、親が結構厳しいの」

「そうなんだ、そのおかげでこんな容姿端麗の美人ができるのね」

女子2人がイチャイチャ話しているのを見てホッコリする

「「あーまた変な目で見てるー」」

俺は今青春してる


「買い物だー!!」

お腹一杯になった次は、夏樹が張り切って大声を出す

大型ショッピングモールにつき、2人の買い物に付き合う

「ねーねーハルくんはどっちがいい?」

イロッチが派手な服+清楚系な服を持ってくる、当然どっちも似合う

「いや、俺あんまり服の事分からないし夏樹に聞いたほうが、、」

「もおっ!」

イロッチがそのまま夏樹の方に行った

「な、なんだったんだ!?」

困惑する俺にイロッチがこっちを向き

「イィーッだ」

あぁなんて可愛んだ

しばらく買い物を楽しんだ後

「そろそろ私の家くる?」

男ならドキッとする言葉ランキング第一位なのでは?

パンッ

頭に軽い衝撃が走る

「っ痛、なにすんだよー夏樹」

「いや、顔が」

「まだ何もしてないのに?」

イロッチが笑ってくれたから許すけど、こいつ!


「ほら2人とも入って入ってー」

イロッチの家に入る

ごく普通の二階建てのアパートだ、少しアパートにしては長い廊下が印象的な

「あースッゲー整頓されとる。Tha女の子の部屋だーいい匂い」

「恥ずかしいからハル君その辺にして」

顔を赤く染めて参ったと顔を手で隠しながら根を上げるイロッチ、、かわいい

「あんたって本当デリカシーないよね、」

「うるせー」

イロッチの部屋は花の香り?がして全体的にピンク色で、ふわふわのクッション

ダブルサイズのふかふかベッド、あと少し気持ちの悪い青い花、、あぁここに暮らしたい

それからは、イロッチの卒業アルバムや昔の写真を見たが キャ、きゃわいいー!!

1000年に一度的なアレだ

「もういいよね 私の写真は」

「いやいや、かわいいからいつまでも見れるよいろっち!」

「恥ずかしいの! っと私のはいいから、久しぶりに2人の事教えてほしいかなー」

「いろっち急だねー、、って別に話す事ないかな、私とハルって腐れ縁ってだけ!なんにもない!!」

こいつめちゃくちゃ否定するやん、、

俺のこと好きなんだよな?

「そうなんだ、好きな人とかいるんじゃないのなつきちゃん」

イロッチが話題を変えてきた、そういや夏樹って意外とモテるけど実際どうなんだろ

確か、俺のこと好きって言う話が、、あれ?いつの話だっけ?

なんか引っかかるな、、、

ーーズキッ

「っ痛ー」

突然頭の中で脳が握られるような感覚に顔をしかめる。

「どうしたの?ハル?嫌な質問だった?っふふ」

声を弾ませ上機嫌なイロッチを横目に、近くにあったベッドに座る。

「ご、ごめん、わざとじゃないんだよ 立ちくらみが俺をこのベッドに、、」

「言い訳はいい!!もうハル!いろっちのベッドから離れるー」

そう言いながら強引に腕を引っ張ってくる

「わかったわかった、、ッチ」

ベッドのふかふかを楽しんで夏樹の隣に座る。

このベッドでイロッチが、、ふ、ふふふ、、ニチャァ  おっと顔がにやけてしまった。

「あっそうだ、2人とも飲み物とってくるね ちょっと待っててね」

そう言って、イロッチが部屋を出る


「ねぇねぇ、ハルー」

隣にいる夏樹がわざわざ耳打ちしてくる

「な、なんだよ耳元でくすぐったいだろ」

「いや、ね、、なんかいろっちがいつもより大人っぽいていうか、、少し別人に思えるんだけど、最初は大人のふりしているだけかなーって思ったけど、どう思う?」

夏樹が違和感があるって言うと、確かにそうなのかなあ?

「違和感かって言われると、確かにそうかもな」

「でっしょーやっぱさ、いろっちも別れるの寂しいから大人ぶってるとか?だったら、可愛くない?」

耳元で笑ってくるから、息が耳に、くすぐったい!

夏樹を手で振り払いながら

「まぁ転校は慣れているだろうから、そんなことないかもだけど」

ッガタ

「ん?」

夏樹とドアの方から物音がして振り返る

「何か音がしたけど、気のせいか、、」

「っでもさでもさ?いつもと違うのは明らかだよ?」

はいはいっと強引に話を終わらせる。

「もーっ」夏樹が不満げにする。

ガチャっ

「楽しそうに2人で何話してたの?私も混ぜて、、」

イロッチが帰ってきた

確かに、何かいつもと違う大人な雰囲気がある。

「2人ともオレンジジュース、嫌い?これしか無かったけど、飲んでね」

勧められたジュースを飲む

なんかジャリジャリする、オレンジ100%?美味しいけど、このジャリジャリが気になる

「どぉ?美味しい?いっぱい飲んでね」

笑顔のイロッチに悪いから、黙って飲む

隣の夏樹を見ると、普通に飲んでいる。

なんか違和感が、、そう思いながら飲み干す

「よっぽどぉ、、かわいて、、だ、、ね、、、ヒャハッ、、ヒャ、、ヒャ」

体の力が抜けていき、意識が薄れていく時高らかに笑うイロッチと、心配そうにこちらを見る夏樹がぼやけて見えた。



「はる、はる いつまで寝てるの!?」

眠い目を擦り、目を開けるとそこには、見慣れたリビングと夏樹がいた。

「あ、、れ?夏樹?イロッチは?」

「イロッチ?、、、あー懐かしい人出すね。もー何年まえの話よ」

「えっとさっきまで。」

「もーはる!また飲みすぎたー?ほら眠気覚ましの水だよ!買い物行くんでしょ30秒で支度しな!」

「姉御!!」

「ッシシ そんだけツッコミできたら大丈夫、ほら行ってきて」

明るく可愛い彼女は、笑顔で見送ってくれた。

「お、おう行ってきます、、」

部屋を出ようとドアに手をかける。


ガンッ

は?頭に激痛が走る

目を開けると、暗い部屋で横たわっていた。

「痛ってー、、殴られた?ってかここどこ?」

真っ暗な部屋を見渡す、しばらく辺りを見渡す。

暗い部屋に段々と目が慣れてきた時、隣に人の気配がした。


「ね、ぇ、お、、きた?」


「うわっあといおいおい」

変な声を出しながら振り向くと、女性?らしき声の肌が焼け爛れた女性がいた。

「お、お前誰だよ」

辺りを見渡し、イロッチの部屋だと気ずく

やっぱり俺、過去に戻ってたんだそう気づいた時

「ハル、逃げて」

隣の女性から、夏樹の声がした。

「お前、、まさか、夏樹か?」

焼け爛れた肌 少し掠れた声 確かにそこにいるのは夏樹だ。

「おね がい ハル いた、い、たす、、、にげて」

そう言うと夏樹が倒れる

は?何これ?えっと、えっと、さっきまで自分の家で、、

「キャハキャハキャハキャハハ」

部屋の隅からイロッチの声が聞こえる

「おい!夏樹が!夏樹が助けないと」恐怖と苛立ちで胃から何かが込み上げてくる

「キャハハどうしたのどうしたの?つ、、つ、らいねハハハえ?キャハはは」

部屋の隅で高らかに笑う女がいた。声や姿はイロッチなのに明らかに様子が変だ。

俯いてぶつぶつと何かを呟きながら、揺れていたり急に大声で笑ったり

部屋で倒れた夏樹と未来の夏樹が重なり、怒りが込み上げる

「ハル、、あ、、の、ねこん、な時にへ、、んなん、ダけ」

ぼろぼろの夏樹?が話す

「喋るなって、すぐ病院行くぞ、一緒にこれからも暮らすんだ」

「ハ  ル 告、、は、く? わ、たしも」

パタッ

倒れる夏樹の横で、笑う女が場違いで憎らしい

「お前はいつまで笑ってんだよ!!」

突然イロがこちらを向き話してくる、目の光が失い人形のように見つめてきながら

「この液体ってねー無くなってねー欲しい物にねーかけるとね、消えるんだ、よ?」

大きいビンを片手にこちらを見るイロの可愛い顔が歪んで見える

「だからねーハル?ワァカ ルル デショ?キャハッ」

様子のおかしいイロと息がない夏樹を見て体が震える

現実離れした現実に嫌気がさし、目の前に人間離れした悪魔のような女イロが笑っていた

吐き気を抑えるのがやっとで、今はイロを睨むことしかできない。

「なになに?そうなったのは?誰が悪いって?2人だよね? ねぇねぇなんで私のでしょ、私の幸せでしょ?またこの女は私の幸せを奪う気なのよ?ねぇ、ハルも戻りたい過去があったから戻ったのよね?何回目?ねぇ何回目?ねぇねぇーなんかイメだよ!!」

狭い部屋に女の声とは思えない怒号が響く。

「でも、それも今回はブレスレットがないの、ないの、もう戻れない何でナンデナンデ、、ハァルゥナンデカナア」

何を言っているんだ、ブレスレット?そういやあのふざけたブレスレット未来の葉月色が渡してきた物を思い出す

やっとの思いで声を出す

「何回目?過去?どうでもいいよ!俺の夏樹を返せよ!!」

「俺の夏樹?私のハルはそんなんこと言わない言わない言わない!誰だだれだダレダ」

イロ?だった何かが唸る

「返せよ夏樹がお前に何したって言うんだよ」

光のないイロの目が俺の顔を、瞬きせず見つめる

「その子が私の幸せを取ろうとした、今回も前回もその前も前も、、いつも私のハルはどこかでその子を思っている、こんな辛い事はない。なっちゃんがそうなったのはお前のせいだハルお前のせいだ。」

なんだこいつ、全て俺が悪いとか、今はそんな事じゃないだろ

何も事情を知らない夏樹をこんな風にして、、

「フッざけんなよ!おい!!そのお前が言う俺はどうか知らん!だけど、今の夏樹には関係ないだろうが、今を何回やり直そうが俺の気持ちは変わらないからな!俺はずっと夏樹が好きだ!!」

「違う違う違う、ハルのせいハルのせい コンナノハル 違うオマエノセイダ オマエダレダ!!?」

突然イロが持っていたビンの中身をぶちまける

アッツ

服や顔素肌にかかる

暑い熱い痛い熱い痛い肌が焼けるような、針で肉を裂かれるよな痛みが全身に広がっていく。

痛みで転がると、床にあたった所から激痛が、、さらに熱湯のような氷水のような液体を笑いながらかけてくるかかった場所から、新しい激痛が上塗りしてくる

次が来る、またすぐ次の痛みが来る、痛い怖い痛い怖い痛いイタイイタイイタイ

朦朧とする意識の中で、夏樹の笑顔を思い浮かべる。

次あったら絶対守ってやる、タイムスリップ前に幸せを感じれなかった罰かもしれない、あの時に戻りたい、

ごめんよ、ごめん、、、、



雨雲が人混みに影を落とす頃、傘さし下を向き歩く人だかり

耳をすませば足音 雨音 足音

疲れた空気が重く誰もがうんざりしている中、そんな空間から逃げるように1人の男が路地裏に入り、タバコに火をつける。

「あーあ、1人は辛いな」

憂鬱な日 には必ず思い出す事がある

高校の頃の散々な記憶 想像で幸せを掴んだ時の俺の家庭

厨二病を拗らせた俺が幼馴染に友達がお前を殺すと必死に話した日

幼馴染や友達に泣かれ、そのまま疎遠になっていった

今となっては、なんであんなふざけた話をしたんだろうか

何か使命感があったはず、、だがそんな馬鹿げた話今の俺でも俺を信じてやれない。

そして、ただの想像妄想でしかないが、、そんなはずだが、鮮明に思い描ける夏樹との幸せな家庭

確かに自分の記憶にはない、思い出せそうで曖昧すぎる想像

考えすぎると頭痛に襲われる

「あんときの夏樹とイロッチの顔思い出すとまだ辛いな」

タバコの火を消し、街の雑音に飲まれる寸前声をかけられる。

「お兄さんお兄さん最近悲しいこと嫌なこと辛いことありませんか?」

そこには、綺麗で大人になった葉月イロらしき人がコチラを見て不気味に笑う

ふふふ

懐かしい笑顔だ、、、でもこんな雰囲気だったっけ?

彼女との再会を喜ぶかのように雨があがる

暗い路地に光が差す が 深いフードに覆われた顔は光を遮り妙に引きあげた口の端が見えた。

「久しぶり、、悲しいことがあった、、かな?現状を変えたい、、とかかな」弱々しく答える

「ふふふ、変わったねお隣さん 高校の時は今まで見てきた者以上に傑作だったわ 本当に今のあなたを見ると私はやっと幸せになったなーって感じるわ さよなら、、私は楽しかったよ、、いや楽しいよ 過去の私は良く頑張ったわ やっと手に入れた幸せフフッ」

そう言うと、葉月イロの腕に黒く光る玉のついたブレスレットが目に入る

目の前が霞み、涙が溢れてくる

「あれ?・・・何で俺・・泣いてんだ?」

何か言ってやらないと気が済まないムズムズが喉から出掛かるが、寸前で行き場をなくし飲みこむ

「おい待ってくれよ、教えてくれないか!?」

路地裏に消えていく、葉月イロをただ見つめることしかできない。

「過去ってなんだよ、俺の高校の時のアレの意味知ってんのかよ、おい!教えてくれよ!頼むから、何かが足りないんだよ」

やっとの思いで出した言葉が都会の喧騒にかき消される。

悔しさ虚しさに胸を締め付けられる。イロを追いかけたいが、震える足が言うことを聞いてくれない。

イロのブレスレットで思い出しふと腕をみる、高校の時に着けていた白い球が一個ついたブレスレットを見つめる。

なんだよ、なんでこんなムズムズするんだ

思い出せない、思い出したい、大切なものが抜けている感覚

もどかしい また楽しかったあの日に戻りたい、、、


ーーピキッ

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今に不満があるなら、もう一回青春してもいいですか? @Jingiskan33

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