第19話 勇者の能力の原因
ついに村を出発してしまった。
最後に村の高台から、再生させた村を視る。ナタリィが花と戯れて、草花に力を与えている。さらに増えていく草花。これが、この村の石鹸や薬となる。それが広まり、世界に届けられる。あぁ、ナタリィの願いとはいえ村を最初に再興させたのは良かった。自分の能力の正しい美しい使い方だったんだと、肯定できる。胸を張れる。
「何視てるんだ」
カガに後ろから声をかけられる。
ナタリィの故郷を神の能力で再興させたことを伝えた。カガが、頭をポンと撫でてくしゃくしゃとして「そうか、職を全うしてて俺はいいと思う」そう言って村長らしき人物と話をしに離れていった。
肯定される、良い行い。そして、職「神」としてのいい行い。確かにあの能力を使ったときは、前神からのエラーも強制も作用してなかった気がする。人の願いを叶えること、神として人を愛でることが前神の強い思念として残っているのはなんだか癪だが悪い気はしない。だが、私のハーレム思い通りにエロエロ計画が「人の願いを叶えて愛でること」に一致してないとして少しでも頭をよぎると頭痛が起きている。
「もっとレベル上げれば、この世界の神としての主導権は私有利になるのかな…」
わからん。だが、とりあえずカガといればレベル上げには困らない。途中の魔獣を倒したりすればパーティー登録している限り経験値は割り振られる。それで少しずつでも上がっていく。それに、行為を全く行わない道中とは思えない。多分、夜数回何度か行為するはず…たぶん……まぁ、あとは男になったタイミングでオナニーのやり方を自分でマスターしてたくさんレベルをあげれればいいだろう。
「アリア!そろそろ行くぞ」
「はーい!」
ナタリィの居る方にそっと「行ってきます」と声をかけて、カガの居る四天王の居る都市の方角を向く。
森が生い茂り、沼地になっている個所も増えてるという。
地図はもらったが、深くなりすぎて村人の危険もかんがみてカガがこれ以上地図の更新するのはやめておけと止めていたため中途半端にはなってしまっているが、安全な道のみが記載された地図だ。問題ない。開拓や地図全部埋めるとかじゃないので、今回はいいだろう。
「アリア、いいのか?しばらく聖堂には帰れなくなるぞ」
村を出てすぐの分かれ道で聖堂の方角を見てカガが気を遣ってくれた。
首を横に振って、笑顔都市の方へ足を進める。
「大丈夫だって。私には"神の目"があるから遠くからでも視れるし」
「ナタリィには…」
「大丈夫だって、そんな私は神様だよ?ナタリィは長寿の聖女のエルフ。二人を引き裂くものはきっと魔獣が世界を覆う時しかない。それ以外に障害はないから」
「……」
「それに、勇者様は守ってくれるんでしょ?世界が大変なことになってもさ、この世界のすべてを」
安心したのか、カガも都市の方へ歩みを進める。
二人並んで、旅路へ。
空飛ぶ魔獣が増えた。臭いが違う。何か、腐敗した臭い。
森の方角からも匂いがきつくなってくる。
だが、歩みを止めることはない。
世界が少しずつ入れ替わっている。おかしくなっているというと語弊が生じるかもしれない。世界は変わっていくものだ。人も、命もめぐりめぐるものだ。神もこうして入れ替わった。主導権はまだ前神の方が強いが……。何か変化が起きたときに、冷静に対応していく者たちが必要だ。それが、私たちや魔王たち王族たち力有る者たちの責務なのだと思う。
「なんでだろうね」
「何がだ?」
「いや、私も君もさもう何度も世界は救ったのにまた救おうとしてるのがさ」
「俺はまだ勇者のジョブを無くしてないから、だな」
あぁ、なるほど。と膝を打ったが、ジョブに縛られているとも思える。前神と相性が良かったカガだからこその考えだからなのか、それとも彼なりの理念なのか。彼の理念に強い支えと呪いの一種をかけたのが前神だと思えばしっくりくるがそれはそれで私の勝手なる考察のしすぎか?
「お前の前の神の聖堂に寄る必要はあるか?」
唐突だった。カガの方から提案してくれることはあるが、こうも思考読まれてるようなことがあるとやっぱり面と食らう。
「えーーーーーー私と前神ちょっと経営理念的なのがちょっと違っててさー…そもそもその聖堂入ろうとしたらバチン!!!とか言って追い出されたりしないかなぁ~って」
「だが、神となるのであれば信仰の力が他に分散するよりもお前に一極集中させるのが最も手っ取り早く能力を有効活用する方法だと思う。であれば、前神の存在を少しでも薄めるために聖堂を破壊するのが良策じゃないか?」
「えっ、前神の加護めっちゃもらってたカガさんがそれ言います?」
「俺だけじゃない、あの神はジョブを授かっているものすべてに加護を付与し、付与する代わりに働けと強制を敷いた。俺の能力が特殊になったのは有難い事でもあったが、縛りでもある。現にパーティーであるお前はこれからもダメージを負い続ける」
「えっ、あの勇者権限って勇者のカガ固有スキルじゃないの?性格が反映されたわけじゃなくって?」
「ぁあ?」
「いえ…すみません……。ってことは、前神のせいで狂勇者になったわけか…ある種被害者だな。なんでそれを相談してくれなかったの?」
「口から出そうとすれば全身に痛みを伴うからな。話すこともできず、仕舞には戦えば戦うほどその縛りがあるのが当たり前だと自分なのだと受け入れてしまい存在も忘れていた」
「今喋れてるのは、神が私になって、少し条件解除されたからってことか……」
ダメだ、頭混乱してきた。だけど、とりあえず、信仰集めなきゃってのと願いを叶えてその人から『私は神だよ』って知ってもらって地道な作業が発生すると。でもって、まだ聖堂がある限りは前神のことを他の国や巡礼しに行く人たちもいるからこそさっさと爆破なり壊すなりする必要がある。そして、この世界の神は入れ替わったと伝える必要がある。
「魔王って、前神と仲良かったっけ…」
「いや、そもそも聖堂に入れず仲も悪く聖堂に籠ってる癖に力だけ与えて自分勝手なやつだ高みの見物か気に入らないと認めてなかったぞ」
「あー、となると、前線にでてる神の私は魔王からしたら別に嫌われる対象じゃない可能性があるかなぁ~」
「いや、お前はもう聖女の時からずっと努力を重ねた末の神だ。あいつは、努力してきたやつは認める。だからか、あいつと呑む酒はうまかった」
あぁ、出たよ魔王べた褒めターン。勇者のくせに、魔王大好きだもんな。理念とか警備方針とか四天王育成や、通常村人や剣士などの育成方法などについてあつーーく語り合ってたなぁ。だからか、カガがこんな浮足立ってるのは。
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