第18話 今のレベルは合計いくつですか。足りてないですか?

 カガの家を出て小山を下り、村の商店に着く。

 必要物資を保存食の類が全く持ってなかった為、魔王の住む王都までの道中で、一番最寄りの四天王の一人がいる都市までは3日は歩き続ける。その分の保存食を買いに来た。

 途中で狩りをしてとってもいいのでは?と思ったが、二人分の食料というのは、なんとも微妙で魔獣は食えるものと食えないものがいる。だが、魔獣を食べるというのを避けたいと真っ先に提案したのはカガだった。魔獣が今までよりも極悪または気持ち悪い状態になっている。悪食スキルの持っている人物が居ればそのスキルを共有して魔獣を食べることは可能だ。だが、私もカガも持ち合わせてない。そのため、安全な保存食で次の町まで向かおうということになった。

 確かに、あのボススライムや豚みたいなでかい油ギッシュな巨大オークを食えと言われたらどう捌いても、おいしそうな肉が取れそうなイメージがわかない。それに、魔を取り込んだことにより王都や四天王の居る都の結界にはじかれて不審物扱いされて取り調べで無駄な時間を過ごすこと間違いなし…


「カガって、狂勇者とか言われてるけどこういうところもっと見せてったらもうちょっと周りからの評価変わる気がするけどなぁ…」


 必要な調合セットと水の入った瓶、聖水、薬草を自分のカバンに詰め荷造りしながら話す。カガも、自分の荷物を確認しながらも、少し動きを止め考えて、首を横に振る。


「いや、周りの評価とかどうでもいい。俺は確かに、戦いたいだけなんだ。一緒に戦ってくれた仲間を大事にしたいだけなんだ。この村の人たちも全員仲間、いや、もう家族だな。そのために剣を振るってるだけだ。痛み悲しみ恐怖をすべて共有して、喜びを分かち合いたいと思ってた。それがこの世界でできた。それだけで、満足だったはずなんだ」


 あー、そういえば、前世では共感神経がマヒしているとか、親に精神科に連れていかれたとか人の痛みがわからないとか、女遊びしてるがワンナイト限定でワンナイトからの恋だってあるはず、とか言われて「それはない、一回は一回だ。それで終わりだ。情などない」とカガが言ったら友達もドン引いて女たちももしかしたらとワンナイト仕掛けて玉砕祭りしてったって。本人曰く、感情が動くことが無かったから、動きやすいであろう性行為にたどり着いたがそこでも何も得られなかったとか…


 なら、今、勇者権限でいろんな感情を自分も獲得できてるのは前世からの欲していたものを得られた、大変花丸満足ですって状態なのか。


「ほんっと、難儀だなぁ、君は…」


「お前ほど拗らせてないがな」


「いや、君もどっこいだわ」


 ハハっと二人で笑いあう。

 あぁ、昔旅をしていた時も前世のこんなこといいなあんなこといいなお前の人生俺もやってみたかったなとかいろんな話をしたっけ。

 とても懐かしい。それがまたできる。今度は新しい異世界転生者もパーティーに迎え入れて珍道中をするのも楽しいに違いない。


「なぁ、パーティーもう少し人数増やそうよ」


「あぁ、お前のレベル今37しかないからな。お前のレベル以上のやつを見つけたら入れていきたいとは思ってる」


「えっ、俺のレベルなんでそんな上がった…???」


 えっと、俺が最低数えられた分は13回イッたことまで。元々ナタリィとでレベル5だから、足して18…つまり、残りの19は…


「カガさんもしかして19回...」


 チャキン、と首元に切っ先が触れる。

 ちょっと首から血が出てるのを感じる。いや、切っ先が冷たいだけなのか、それとも本当に血が出てるのか…


「皆までいうな、言えば喉を裂く。離せなくとも神の力は使えるだろ。聖女時代も途中から詠唱破棄して魔法を連発していたくらいだ、できるよな?」


 圧がすごい。目が真剣だ。怖すぎる、男版のカガ…いや、もともと男なんだけども。


「い、言わない…から、剣しまってくれないかな…」


 喉から離されて、安心して深呼吸をする。首に手を添えると、指に血が付着してる。


「ぉおおおおい?!?!!血が出てんだけど?!?!?なんで?!?!俺だってだいぶレベルについて開示されるのプライバシー侵害なのに、なんでお前のは言っちゃダメなの?!ってか、首ちょっとマジで皮膚切れてんじゃん!回復するからいいとか思ってねぇか!?」


 本気で慌ててる私を見て、カガが自分の手をグッパグッパしながら剣を鞘から抜き人の居ない場所で剣を振るう。

 何か違和感を感じているようだ。


「男から女になって、女から男に戻ってしかも若返って…感覚が鈍ってる。首のことは謝る」


「あえ、あ、うん、了解…そうかこの前まで爺ちゃんだったんだっけ」


「お前もだろ」


「そうだわ、もしかして、私のレベル足りない説ある?カガさんちょっと感覚が鈍ってるならなおのこともう少しレベル上げてとか…」


「レベルを上げることだけがすべてじゃない。実地も必要だ。旅している間に魔物位いくらでも遭遇するだろ。それを積極的に昔のように倒していく。それで直す。いいな」


「う、うん」


 訓練よりも、演習よりも、確かに現場の方が一番しっかりと身に付く。だって、一歩間違えたら死ぬから…。今は死なないかもしれないが。





 ――あれ…神って死なないってルールあったっけ?


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