第二部 新たな自分の世界そして、他異世界転生者との再邂逅
第10話 俺(神)としての新たな残酷な世界
「こんなに、世界って賑わってたっけ……」
町へ下り、ナタリィからもらったいくらかの金で衣服をそろえた。防具は必要ないとは思いたい。武器も買わなかった。神が人を傷つけるものを持ち合わせるのは、自分で自分の想像する神の姿に解釈が合わなかったからだ。北欧などは神が武器を持っているのは当たり前どころか割と普通だろうが、俺は、なんだかこの世界をそんな物騒なものにしたくない。そう思っていた。
(私は……俺は、この世界で本当に求めてるのは救済だったのかな…)
記憶があやふやになってくる。
俺は確かにエロスの為に、スケベの為に、ナタリィみたいなまぐわいを各地で行うために。ハーレムも、NTRも、全裸にならなければならない日を作って遊ぼうとか「神になったらやりたいことリスト」を作ったのに、それをポケットから取り出しても心が胸躍らない。それよりも、思考を支配するものは村を助けなければならない。その一つしか出てこなかった。
「こんな神に、俺は……なりたかったのか…?」
一人で町のど真ん中、呟いても数人振り返りひそひそと話をするだけで、声をかけることもなく私を、俺を、神だと讃えることもない。
純粋無垢な子供は、幽霊が見えたりする。神が見える。神隠しにあう確率が高いなどあるが、そんなこと全くない。子供たちは私と目が合うが、すぐにどこか別の場所に興味を持ち走り去ってしまう。
神とは、一体なんだ?
「おい、医者は!怪我人がいるんだ!」
私が入ってきた場所から反対の町の門から入ってきたのは、大勢の怪我人を乗せた荷馬車だった。引いてきたのは怪我を負ったオークと人間。人がざわめきだし、子供たちは家に入れられる。
脳に直接電撃が走り、目の前にはまた新たな指示が表示される。
<――神は、人を愛し、救うもの――>
<例え、それが讃えられることが無くとも>
「んなの、救ったら有難がられるのが普通だろ…」
以前、神の座に居た存在の意志なのか。とても強固なものを感じる。今神であるのはこの私"アリア"だが、それよりも前回の神の力が強すぎる。抗えば抗うほど頭痛だけではおさまらず体を蝕まれていく。
「くそぉ……私が、神になったのに……なんでもっと楽に…楽しめない…のよ……」
体の痛みも頭痛も吐き気もおさまらない。これを解決する手段はただ一つ。前回の神の言う通り、人を助けること。実際、自分のしようとしている狼煙の上がっている村を助ける事と一致している。だから、助ける。だが…
「
項垂れながら、ひどい顔色を隠すためフードを被り荷馬車へと歩いていく。
わらわらと遠巻きに見ているだけの野次馬をかき分け、医者も押し退け怪我人の横に膝をガクンと突く。
「君、怪我人の治療が先だ!」
「そうだそうだ、良く分からないやつは引っ込んでろ!」
「聖堂の聖女長に連絡を!治療薬の強化を頼んで来い!」
神である私なんて、ただの村人Aか不審者かそれ以下視界に入れてもちょっとしか話にならない。それよりも、ナタリィや聖女の方が人々に近いのが現実だった。いやだなぁ、こんな人たちを救うとか。でも、救わないと…私の考えたいろんなシュチュ用の人員が減ってしまう…
<―神たるもの、人を救うことは当然である―>
(神の座を引きずり降ろされた癖に、まだ人を救おうなんて…無理にもほどがあるだろ…)
怒りに触れたのか、頭にひと際強い電撃が走る。
「あぁクソ……治します、救うから黙ってて!!!!!」
運んできたオークと人間の心を勝手に覗き見る。怪我人の居る荷馬車の中にも体を引きずりながら乗り込み中の子供、老人、若人山積みにされた人々の心をすべて覗き、心を読み、祈りと願い聞き取り力を蓄える。
(助けてください)
(だれでもいい、助けて下さい)
(お願い、聖女様、お医者様、神様)
(痛い、痛いよ、助けて)
(お願い、助けて…)
(神しゃ…ま…)
――よし、願いが集まった。これで、できる!!
「治したまえ…」
荷馬車ごと、町一体をすべて緑の光が包み込む。
一瞬でけが人は治り、光は消滅しキラキラとした粒子に変わり天に昇っていく。
――どうして天に昇るのよ。神である、私の元へくるはずでしょう…この世界の神は私のはずなのに…
周囲に居た医者や住人は驚き怪我人を荷馬車から降ろし、怪我の確認を行っていく。信じられないと驚く人、助かったと抱きしめあう元怪我人。荷馬車を引いてきたオークと人間は安堵から倒れ意識を失い、そちらの看病に医者と住人はすぐさま駆けつけた。
私は、ただ一人、人の去った荷馬車の近くに取り残された。
体のペナルティは無くなり、自由の身となった。頭痛も、目の前のエラーも出ない。ただただ、解せない。神にもなったのに、制限が多いなんてそんなのないだろ。
「また、転生してきたときと似たような無力感。ってか、むしろ聖女の時よりも存在希釈されすぎてない?これって、どういう罰よ…なぁ、神様」
ナタリィの願いを叶え、行為が出来て私は調子に乗っていた。
エロいことを毎回できると思って、町に行けば町娘とでも一発とか思ってた。
でも、息子は勃たないし、それよりも狼煙が気になる。救わなければならないという焦りと緊張感と謎の不安感が勝りすぎている。
「あの村救ったら憶えてろよ、前神さんよぉ…世界のどこかにあるはずのあんたの聖堂ぶっ壊して、存在抹消してやる…」
――そして、私の存在を世界に上書きしてやる
…絶対に…私のハーレムを…作り上げるんだから
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