第2話 親友ナタリィ登場

「ナタリィ…ナタリィ!」

 私は、勢いよく抱き着いた。

 それを抱きしめ返して、いい子いい子と頭を撫でてくれる。

 あぁ、心が、落ち着く。

 変わることのない、肌のぬくもり、弾力、柔らかさ。



 髪は薄い金髪、目は鮮やかなエメラルド。

 胸はGカップ、腰は安産型。

 男からは私が一生懸命守ってきた。

 そう全ては、私がおいしくいただくために…


 私は馬鹿なのか。何故、すぐに思いつかなかったのだろう。

 他の子じゃなく、この世界へ来てからずっと決めていたじゃないか。

 故郷を燃やされ、心細い中私と共に生活を共に成長してきた。

 私は適正年齢になり、各地を巡礼と共に勇者と世界を救う。

 ナタリィを教会に一人残していくことになる。ごめんなさいと言っても。

 もう大丈夫、いつでも私は貴女の味方。もう子供の泣き虫ナタリィじゃない。

 ここで強く生きて待っているわと言ってくれた女性。

 人と魔物の合併軍に村を燃やされた過去を持ちながらも、

 人々を癒し続ける清く誇り高く強い心の持ち主のハイエルフ

 ナタリィこそ聖女に相応しいと……


「アリア?大丈夫?」

「あ、うん、大丈夫」


 とてもいい匂いがする。今にも犯したくなる。


 危ないと思い、エラーシステム警告音と闘いながら一人ふらふらと

 ナタリィの顔を正面から見るため、立つ。




「ナタリィ、お願いが…」


 さっさと、後任を決めたい。そして、目の前に出ているエラー表記をなくして

 ナタリィの乳首と下腹部を凝視したい…

 どれだけ悲惨な過去だとわかっていても、私は彼女と共に過ごしていた日々が

 苦痛で苦痛で幸せでたまらなかった。一緒に湯浴みをした時も同性だからという理由で何度も何度もたわわな乳と乳首を見れていたというのに、エラー画面のせいでそれが見えない。

 ものすごいストレスだ。

 見せろ、早く、見たい…見ないと正気が保てない。

 ストレスだ、邪魔だとシステムを拒絶するたびに、脳に痛みが走り体が立てないほどの痛みが襲い掛かる。


「いいけど、どうしたの?」

「単調直入に言うね、あの聖堂の聖女長になって欲しい」

「えっ、そんなだってそれは貴女の…」

「お願い、私のステータスをみて…」

 顔がだんだんと笑顔を保てなくなってきた。

 痛い、しんどい、死にそう。

 だけど、それよりも彼女に後任になると宣言してもらってエラー画面を消せば

 この苦痛から解放され私は幸せになれる。


「す、ステータス……っ!!」

 ナタリィが私のおでこにおでこをくっつけて確認してくれている。


 この世界では誰でもではないが、相手をスキャンしてジョブを確認することができる。

 彼女の場合は、人に触れることによりステータスを確認できる。

 そのため、異性のステータス確認を教会で依頼されるときは要注意だった。

 匂いに惑わされ、何度も危険な事件が起きそうになった。ストーカー被害も多々あった。


 ナタリィが顔を離す。

 そして


「私ナタリィは、アリアの後任聖女長のお役目をお引き受けいたします」


 体の痛みが一気に直り、画面がクリアになる。

 目の前のナタリィは涙を流している。

 私もなぜか、涙を流していた。

 痛みから解放されて安心しているのか。

 それとも、後任を受け入れてくれてうれしいのか

 感情が溢れて訳が分からない。


 ナタリィが私を勢いよく抱きしめてくる。

 そして、涙ながらに言葉を放つ。


「おめでとう、アリア…本当に…おめでとう……

 貴女は神になれた…貴女の努力は報われたのよ…良かった…本当に…良かった…」


 鼻をすする音も聞こえる、私の音なのか彼女の音なのかわからない。

 私は気が付いたら、彼女を抱きしめ返し、大声で泣いていた。

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