色と放置

 翌日、神原の予想通り、俺は朝から〈6³〉に呼び出されていた。

 車で迎えられ、施設に着くなり連れて行かれたのは広く白い部屋。

 真っ白なローブに身を包んだ老婆と、数人の白いコートを纏った男女が待っていた。

「来たかい! 新入り! こっちにおいで!」

 老婆はそう言って手招くと、白いコートの男女を見回す。

「いいかい? 今日の午後! 都市部でかなり厄介なのが暴れるみたいだよ! みんなで協力して滅してやりな!」

 白いコートの男女を前に、老婆は意気揚々と声を張り上げる。

 状況も掴めず、呆気にとられていると、髪の長い女性に袖を引っ張られた。

「ふふっ! 元気なお婆さんでしょ?」

 その女性は美紅だった。

 芳しい香りを漂わせる美紅に、一瞬、一昨日の夜の事を思い出してしまい返答に詰まった。

「あれぇ? どうしたのかなぁ? 緊張してる?」

「あ、いえ、別に……」

「いいかいっ! イチャイチャするのは! 任務を終えてからにしな!」

 老婆の怒鳴り声に、周りからクスクスと笑い声が漏れる。

「あ、あの、すいません……」

 頭を掻きながら謝る俺に美紅はウインクすると老婆に向き直った。

「よし! 赤! 青! 紫! あと! 緑! 行ってきな! 残りは後方支援だよっ! いいかい? 死ぬんじゃないよっ! 頑張ってきなっ!」

 老婆がそう発すると、白いコートの男女は一斉に駆け出し部屋を後にした。

 美紅も俺に向かってひらひらと手を振り、その一団に続いて出て行ってしまった。

「え、え? あれ? え?」

 どうしたらいいか分からない俺はただキョロキョロと辺りを見回すしかなかった。

 先ほど、老婆は色分けで指示を出していたが、パッと見でみんな同じ様な恰好をしていた。

 各々は自分の色というか所属というか、それを判っているんだろう。

 外見では見分けはつかないけど、そもそも俺は何色に属するんだろうか。

「新入りっ! 制服はどうしたんだいっ?!」

 出口に向かっていて老婆が振り返り、怒声をぶつけてくる。

「あ、え、せ、制服ですか?」

 老婆の怒鳴り声に、恐る恐る質問で返すと。

「何だい!! 貰ってないのかい! まぁいい! さっさと任務に行ってきな!!」

 老婆はさらに怒気を強めてそう言い残すと、足早に部屋を出て行った。

「……え? あ、あぁ……任務って、どこに行けば……俺は何色なんだ?」

 老婆の迫力に圧倒され一時的に竦んでいた俺は誰もいなくなった広いだけの空間をぐるりと見回し、困惑して頭を掻くしかなかった。

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