第15話 分からない三人
「とりあえず映画見ることになったけどなんの映画にする?」
司は、二人に映画の意見を求める。
「私はなんでもいいんですけど、西園寺さんも分かるようなものがいいですね」
【申し訳ないです…】
「西園寺さんは気にしなくていいよ!今日は目一杯楽しませるって決めたから!」
司は恥ずかしげもなく抹白にそう言い放った。もちろん無自覚に言ってしまったのだが、抹白の顔を見ればその言葉がどれほどの威力だったのかは想像に難くない。
【どうしたの西園寺さん!?顔真っ赤だよ!?】
自分がしたとも気づいていない司はさらなる攻撃に移る。
【…あ、あぅ…】
子猫のように可愛らしく声を上げるのをみて、日南はわざとらしく咳払いをする。
「げふん!私いいこと思いついたんですけど、英語の映画を観ればいいんじゃないですか?みんな平等じゃないですか!」
「名案すぎる!さすが日南ちゃん!」
「へ、へへぇ~、それほどでもぉ」
【流石です日南さん!】
「それじゃ早速映画館に行ってチケットを買おう!」
「「はい!!」」
三人とも、重大なことに気が付かなかった。
それが分かるのは映画が終わったあとであった…
「……」
「……」
【……】
三人が見たのは英語だけで展開される恋愛映画だった。
重大な事実に気づいたのは映画が始まってすぐだった。
「———————————」
「——————————————」
「「「・・・・・」」」
字幕はもちろんあったのだが、それ以前に三人は英語が全くできなかったのだ。
司は、英語よりもロシア語を勉強しているから。
抹白は、今必死に日本後を勉強しているから。
日南は、単純に勉強ができないタイプだから。
三人はそれぞれの理由で英語が分からなかった。
当然英語が分からないのに英語オンリーの映画を理解することなんてできる筈もなく、感動なんかも味わえないまま無意味な時間を過ごした。
三人の間になんとも言えない気まずい雰囲気が流れる。
なんとも言えない雰囲気を払拭しようと司は、話題転換をする。
「み、みんなお腹も空いただろうし、フードコートいってなんか食べない?」
「そ、そうですね!」
【私、フードコートなんて行ったことないからよく分からないかもです…】
「え、行ったことないの!?」
日南は初めてそんな人を見たという風な目で抹白を見た。
当然だ、抹白が西園寺財閥の令嬢ということをあえて司は伝えてないし、そんな子がフードコートなんかに来るわけがないのだ。
「そうらしいから、俺たちで教え合いながら楽しく食事をしよう!」
「そうですね!」
「あ、ありがとう、ございます?」
抹白はまたしても語尾に『?』を付けてしまい、イントネーションがおかしくなってしまっていた。
その様子をみた司と日南は笑い合う。
三人の間には先ほどのような気まずい雰囲気はなかった。
フードコートに行く途中ですら、三人の美男美女達は周囲の目線を無差別に奪ってしまう。
ロシア語で話す、銀髪美少女。
それに平然と受け答えをする日本人のイケメン男。
その横で楽しそうに笑う日本人なのに金髪の美少女。
周りは何がなにか分からずどよめく。
「どうして男1、女2なんだ?」
「兄妹じゃななそうだし、いったいどういう関係なんだ!?」
「あの三人レベル高すぎて草」
「どうしてこんなところにいるのかな?」
「「「・・・・・・」」」
周りの反応に気づいたのか、三人は無言になる。
またしても決まずい雰囲気になった。
しかし三人はそのままフードコートへと突入したのだった。
フードコートに着くと抹白は目の前の光景に驚きの声を上げる。
【たくさんのお店が並んでいますね!】
「ま、フードコートだからな」
「早く食べましょうよぉ…お腹ペコペコです!」
フードコートに着いた三人は各々違った反応を見せる。
【それにしても何を食べればいいんでしょうか…】
数十にも及ぶ店をみて困ったように抹白は呟く。
【それじゃあそこのお店は?】
司は黄色のMのロゴが入ったジャンクフードの店を指さした。
「やっぱり遊びに来たらそれですよね!」
日南も司の意見に賛同する。
【それでは私はそれにしてみます!司くんたちは?】
「俺もその店にするよ」
「私もです!」
三人とも意見が一致したので、その店に向かう。
注文して準備されたものを空いている席を見つけて運ぶ。
三人は席につくと各自で自分の注文したハンバーガーやジュース、ポテトなどを開けていく。
【これが噂に聞くハンバーガーなんですね…】
ゴクリという音が聞こえてきそうなくらい抹白は自分の手に持っているハンバーガーに夢中になっている。
(夢中になって子供みたいになっている西園寺さんやっぱ可愛いな…)
【それでは…いただきます…】
司と日南は固唾をのんで見守る。
抹白は可愛らしい小さな口でハンバーガーにかみつくと、目を瞑りゆっくりと味わうように咀嚼する。
((どっちなんだ!?))
抹白の様子は、美味しいとも不味いともどちらともにとれる様子だった。
食べ終わったっても何も言わない抹白に、たまらず司は声を掛ける。
【おいしかった…?】
抹白は司の目をじっと見つめて、満面の笑みを浮かべて告げる。
「とっても、おいしいです!!」
と…
■
予約投稿ミスってました!
もうすぐテスト期間の方に入るので不定期になる恐れがあります。
いつでも更新されていいように、フォローをお願いします!
また、異世界もののラブコメを書いているのでお楽しみに!
それではまた次話で!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます