第10話 ただの幼馴染だった二人の過去

例の男からの執拗な告白から逃れた司と水菜は帰路についていた。

「今日は助けてくれてありがとね。」

「なに湿気た顔してんだよ?水菜らしくないぞ?」

そう言って爽やかな笑みを私に向けてくれる。司は本当にかっこいいな…

「どうした?やっぱりあの先輩怖かったか?」


司は心配した様子で水菜の顔を覗き込んだ。

(—っ!司顔近いってば~!ほんとに無自覚でやってるから余計にたちが悪い~)

水菜は自分の顔が赤くなっているのが司に伝わらないように顔を俯け、必死に言い訳をする。

「こ、怖かったけど、司が助けてくれたから大丈夫だよ?」

「ほんとか?水菜の顔赤いけど?」

(っ~~バレてた~~~~!)

「ほ、ほんとに大丈夫だから!あっ、私こっちだから!また明日ね!」

「お、おう。また明日な!」

少々強引な別れ方だったが、二人は互いの家に帰っていく。

ここから二人の歯車がズレていくのを知らずに、

これが二人仲良く話せる最後の時間だったと知らずに………



次の日私が学校に着くと大勢のクラスメイトが周りを囲ってきた。

「み、みんなどうしたの?」

私と仲の良い友達の女子が心配気に口を開いた。

その口から紡がれた言葉に水菜は一瞬意識が遠のくのを感じた。

「例の幼馴染の子に言い寄られたんでしょ?大丈夫だった?」

クラスメイト達も口々に「大丈夫だった?」「幼馴染の男最低やね」「俺が蓮見さんを守る!」などなど…十人十色の反応を見せる。

「ちょ、ちょっとまって!落ち着いて―」

水菜が発した言葉は扉の大きな開閉音に邪魔をされる。


――—ガラガラ。


「大丈夫だったかい蓮見ちゃん?」

大げさに登場した例の男が水菜たちの教室に入り、水菜の元に駆け寄る。

クラスメイト達はなんでここにこの男がいるのかわかっていなそうだった。

もちろん私もだが。


「昨日は大丈夫だった?災難だったね、僕が居なかったら君はいったいどうなっていたのやら…」

「え、ちょっと何言って――」

「大丈夫だよ蓮見ちゃん。僕が蓮見ちゃんを守るから!」

「このかっこいい先輩が助けてくれたの!?」「俺が蓮見ちゃんを守るんだ!」「よかったね蓮見ちゃん」——

クラスメイト達も騒ぎ始めた。


ほんとにこの男といいクラスメイト達は何を言っているんでしょうか??あなたが全部昨日の私にしたことじゃないの?


――—ガラガラ。


今一番|教室入ってはいけない人物が入ってきてしまった。

その招かれざる人物は、いつもと変わらない様子で呑気にクラスメイト達に声を掛けていく。

「どうしたんだ、こんなに騒いで?今日テストかなんかだっけ?」


例の男は大柄な体格を生かしてがドシドシと教室の窓を震わせながら司に近づいていく。


「お前!よくノコノコと教室ここに来れたな!お前が俺の蓮見ちゃんを!!」

「お前、何言ってるんだ?いったような気がするんだが。」

「とぼけるな!お前が蓮見ちゃんに言い寄っているネタは上がってるんだよ!」

「無視するなよ…というかお前もう近づかないって約束しなかったか?」

「グダグダ言ってんじゃねぇ!」


そう言って司にスマホ見せ、そこに映された写真がクラスメイト達にも晒された。

「なんの写真だ…これ…?」

そこには怖がっている水菜の手を引っ張っている司の写真があった。

「これが証拠だ。何度も言うがお前がどうこう言える立場じゃない。」

「そうだそうだ!」「冬月くんいい人だと思っていたのに…」「お前が蓮見さんに構ってもらえてるからって調子にのるな!」「『。」「冬月くんほんとなの?」——


つぎつぎと紡がれていくクラスメイト達からの司に対する非難や不信感。


私は助けを求めている司の手を。取らなければいけなかった手を…


「み、水菜?こんなの違うよな…嘘だってみんなに言ってくれ…」

司が私に近づいてくる。私は近づいてくる司に寄り添おうとしたが邪魔をされてしまう。

「蓮見ちゃんにこれ以上近づくな!怖がっているじゃないか!」

「っ!」

「ち、ちがうよ司—」

「そこをどいてくれよ…俺は水菜の幼馴染だぞ…?」

だからってやっていいことと悪いことがあるじゃないか!」

「ほんとに違うの、司—」

「もうやめてくれ司。」

司の動きを止めたのは、司のこの学校の唯一の親友斎藤和馬だった。

「お前のそんな姿は見たくない…蓮見さんをみてみろ!怖がっているじゃないか!」


違う違う。司に怖がっているんじゃないの。私はクラスのみんなあなたたち

が怖いの。

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う…

どうしてみんなは司をいじめるの?

どうして私の大好きな人をいじめるの?

どうして私の幼馴染をいじめるの?


どうしてどうしてどうしてどうして…

「ごめん水菜——」

「しゃべるな卑怯者!」「いい加減諦めろ!」「俺たちの蓮見ちゃんにこれ以上は手を出すな!」………

クラスメイト達は次々に司に非難を浴びせる。

司の目にハイライトの輝きが失われていって・・・

「もう僕は『ヒーロー』になれそうにないや…」

クラスメイト達からの非難から耐えきれなくなった司は、そう言い残して私達の元を去った。

もう「『ヒーロー』になれない…」。その言葉を残して…


水菜と司は男にハメられたのだった。


二人の間に大きすぎる溝を残して―――





『ヒーロー』を諦めた理由が分かりましたね…

これから抹白と司と水菜の三人の関係はどうなってしまうのか…

まだ一人メインヒロインがいるのですが、それはもうしばらくかかりそうです(笑)


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それでは次は司side でお会いしましょう!

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