第8話 幼馴染みは話したい
波乱万丈の朝のホームルームが終わると早速抹白はクラスメイト達から質問攻めにあっていた。
「ねね!西園寺さんってあの西園寺財閥の関係者?」
あるクラスメイトが抹白にそんな質問が投げられた。
抹白はクラスメイトが何を言っているのか分からないといった様子で司に顔を向け首をかしげてくる。
まったく、美少女はどんな仕草も絵になるからほんとにずるい。
【司くん、この人は何を言っているんですか?】
【なんか西園寺財閥の関係者かって聞いてるぞ。】
ロシア語で会話をしているのでクラスメイト達は一斉にどよめきをあげた。そりゃそうだ、陰キャが本当にロシア語をしゃべっているのだから。
一方で、抹白の表情はなぜか暗かった。
心配なった司は抹白にたまらず声を掛けた。
【ん?どうした抹白さん?大丈夫?】
【いえいえ、お気になさらず…そうですね…私は西園寺財閥のトップの西園寺五郎の娘ですね。】
「え!?」
ロシア語で話していたのに司が急に日本語で驚いたため、クラスメイト達も驚く。
「いったい何って言ったんだ、西園寺さんは!?」
司は抹白に聞いていいか?と視線で合図を送ると、笑みが返ってきたのでクラスメイト達に告げることにした。
「西園寺さんは西園寺財閥のトップ、西園寺五郎の娘だそうだ。」
司が放った言葉でクラス中が一瞬、電撃が走ったかのように静まり返った。
しばらくクラスが静寂に包まれていると一人の美少女が声をあげた。
「ちょっと司、それは本当?」
一瞬司の顔が引きつるのを抹白は見てしまったが、司はそんなことはお構いないと美少女に質問の答えを述べる。
「どうやらそうらしいぞ、
美少女の名前は
長い黒髪が特徴的な美少女で、彼女に告白して撃沈してきた男は数知れずだとか…なんでも本人曰く好きな人が居るとのことで、男たちの間ではそいつは誰なんだ!と血眼になって探しているらしい。
司にとってはそんなことどうでもいいのだが。もうあの女は過去の人物だ。たとえ昔から知っている幼馴染だとしても。
「そうなのね、これから仲良くしてね西園寺さん。」
水菜は少々冷たく聞こえる口調で抹白に手を差し出す。
抹白はそんな水菜の様子が分からなかったようで、流石としか言いようがない笑顔いっぱいの顔で握手を返す。
「こちら、こそ、よろしく?みずなさん!」
そんな美少女二人のやり取りを見て何人かの男子は悶絶していたが気にしないでおこう。わかるぞ男子!俺もそうなりそうだった!と心の中で司は開き直っていた。
しばらく授業後の休み時間にそのような感じで質問が繰り返されていたが(もちろん司を通して)、うまくクラスの雰囲気になじめているようだった。
中には「彼氏いるの?」と聞いてきたときは直球すぎて驚いたが、抹白は特に怒った様子も見せずに「いませんよ」と微笑みかけ、数名の男子がガッツポーズをかましていた。もちろん俺も。
昼休み、司は購買に今日もパンを買いに行こうとする司に声を掛ける少女がいた。
「なんのようだ水菜?」
司は声の主の顔を見ることなく淡々と答えていく。
水菜はもじもじとした様子で司に言う。
「あのね司?一緒にご飯食べない?も、もちろんいやなら…」
司は水菜が言っている言葉を途中で遮り、思い出したかのように応える。
「あ、すまん水菜。俺今から職員室に用事あったんだった。今日は無理そうだ。」
「そ、そうなのね!時間を取らせてしまってすまなかったわね!いってらっしゃい司。」
「あぁ、ほんとにごめん水菜。」
司は足早に職員室の方へと歩き出し、水菜と距離を取った。
「どうしてあなたは私を避けるの?答えてよ、司…」
少女は少年に聞こえない大きさの声でそっと呟いたのだった。
〈抹白side——〉
私はたくさんの人達に声を掛けられていました。もちろんなんて言っているのか分からなかったでどうしようかと、本気で焦っていました。
「ええっと…みなさん…」
私の喉からでてきた声はとても小さなもので誰も気づく人はいませんでした。彼以外は…
「おーいお前ら、ちょっとどいてくれ。西園寺さん先生に呼び出しされてるから道開けてくれー。」
司くんがなんて言っているのかはわかりませんでしたが、さっきまで私の周りにいた人たちが居なくなっていくのがわかりました。中には舌打ちをしている人もいましたが、なんとかいなくなってくれました。
私は思いました。やっぱりあの時の少年は司くんだったんだって。
都合がいいことはわかっていますがそう思うと思わず口元がにやけてしまいます。
【どうした西園寺さん?ニヤニヤして…もしかしてさっきの俺ダサかった?】
わちゃわちゃしている司くんが可愛かったので意地悪をしてみることにしました。
【そうですね、とってもかっこよかったですよ?つ・か・さ・くん♪】
だんだん顔が赤くなっているのがとってもかわいいです。
【そんなことよりこれからどうする?このままだと落ち着いてごはん食べれないだろ?よかったらおすすめの場所教えるが…】
【それじゃあ是非お願いします!】
【—っ!まかせろ。】
こうして私たちは楽しい昼食を屋上で楽しみました。
■
司くん水菜ちゃんへの扱いひどくない?まぁ、これからもっとひどい目にあっていくんですけどね(鬼畜)。
一体二人の間には何があったのでしょうか…
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それではまた次話で!
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