第4話 ヒーローは銀髪美少女を助ける
「——————!!」
少女が言葉にならない声を出したのが合図となり、
司は少女を助けるためもう一度ヒーローになる。
先に駆け出したのは、司の方だった。
「ふざけるなっッ!」
全速力で駆け、右こぶしを金髪の男の溝に振るう。
「——な!?」
「————————!」
とっさに防御をしてしまった金髪の男は銀髪の少女の髪を離してしまった。
それでも司の全力の一撃を受けた金髪男は完全には受けきれず後ろにたじろぐ。
それだけの威力が司にはあった。ぱっとしないボサボサの黒髪。血色の悪そうに見える色白の肌。自信がなさそうに見える猫背。目が悪いのか優等生がかけるような眼鏡をしている。どこをどうとってもパッとしない陰キャだ。
だが火事場の馬鹿力か、それとも潜在的な何かか、体格でも劣っているはずの司は金髪の男を圧倒していく。
「甘いんだよッ!」
「ひっ!」
情けない声を出しているが司は気にしない。
(何が「ひっ!」だよ!!気持ち悪い声を出すな!!)
後ろにたじろいだ男に向かって追撃の回し蹴りを
おおよそ陰キャには放てない一撃だった。いや、陰キャが放っていい一撃じゃなかった。
司に渾身の回し蹴りを食らった金髪の男は近くのごみ箱に向かって飛んでいった。
「ひっ…」
まだやるか?という意味も込めて金髪の男を睨んだが、あっけなく尻尾を巻いて逃げ出した。その後ろ姿は情けないの一言に尽きた。
(粋がってた割には案外どーってことなかったな。)
心の中で悪態をついた司は、銀髪の美少女に向かって足を進めた。
〈銀髪美少女side—〉
司と出会う数十分前
日本語があまりよくわからなかった私は久しぶりに日本にやってきていた。
(あの男の子にまた会えるのかな…私の事覚えてくれてるかな…?)
きれいに手入れが行き届いている銀髪を指でクルクルと遊ばせながら大きな店が立ち並ぶ道を少女は一人歩いていた。
(きれいだけど…何か物足りなく感じてしまいますね…)
ロシア育ちの日本人とロシア人のハーフである、銀髪の美少女はロシアでも多くの建物がうっそうとそびえる所に住んでいたのだ。昔小さなころに一度だけ行った日本のある草原。昔の事過ぎて地名はわからないけれど、もう一度あの場所に行きたいと思っていた。ある男の子に合うために。
(ほんとにこれからどうしましょうか…)
少女もまた道に迷っていたのだ。一緒に来ていた人ともはぐれてしまい、初めてきた場所ということもあって道に迷っていた。
(けっして、けっして方向音痴ということはないはず…いつかきっと分かるところに出るはずよ!)
呑気にそんなことを考えていると急に後ろから肩をつかまれた。
「——!」
「どうしたんだいかわいい女の子がこんな暗い路地に一人っきりなんて?襲われちゃうぞ?」
そう言いながらにこやかに笑う金髪の男。少女は日本語が分からなかった。有名な日本語以外は全く分からなかったのだ。
(あまり格好はよろしくありませんが…笑ってるということはきっと善い人なんですよね!)
少女は盛大に勘違いをしていた。ナンパ男が自分に善意を向けていると。
少女は全く社会を知らずに生きてきたのだ。こんな美少女に下心を持たずに話しかける男はいない。そのことを知らずに人生を歩んできた。
所謂‘‘箱入り娘‘‘と呼ばれる人種だったのだ。それも重度の…
「お!その反応はいいってことだね!ついてるぜ俺ってば!!」
そうして少女の手を握り男は歩き出す。
またしても少女はやらかしてしまう。まるで脊髄反射かのように笑顔を向けられたら笑顔で返すという行為が体に染みついてしまっていたのだ。
(とりあえずこの人について行きましょうか…)
しばらく路地を歩くとなんとも言えない雰囲気をもつ建物の中についていた。
外はうっすらと暗くなっていてポツポツと雨が降り出している。
「さ!楽しもうぜ?精々いい声を聞かせてくれよな?」
そう言って薄気味悪く笑いだす男。
その男の反応を見て少女はやっと気づいた。
(私はこの男の人に騙されていたの…?)と、
「おい、どうしたんだよ。早く行くぞ?」
少女は途端にこの状況に恐怖を覚えてしまった。
いまからきっと自分には悪いことが行われると少女の本能が訴えていた。けれどそう思いだすと足が震えて逃げ出せなくなかった。
(怖い…早く逃げなきゃ…)
「おいおいここまで来てそれはないだろう!はやく行くんだよ!」
金髪の男が怒りをにじませた声で少女にどなった。
少女には相変わらず男の言っていることが分からなかった。
けれどその怒鳴り声を聞いて少女はやっと我に返った。
(早くここから離れなきゃ!)
そうして少女は走りだす。雨もそろそろ本格的に降り始めてきてしまった。
しかし少女の歩みは男にとってあまりにも遅すぎた。
「何逃げてんだよッ!!」
男は少女の艶やかな銀の髪を引っ張った。
「—――!」
「何言ってるんだよ笑。頭でもおかしくなったか?」
とっさに少女は悲鳴を上げた。もうどうしようもなかった。絶体絶命を体現したような状況だった。
(助けて…私の『ヒーロー』…)
少女は願う。
一回会っただけの男の子に。
偶然会っただけの男の子に。
私を助けて…そう願った――
■
場面がぐちゃぐちゃになってしまいすみません<m(__)m>
少し長くなってしまったのでここで一度切ります。
金髪の男クズ過ぎて草。早く助けてあげて!と思った方は☆といいねのをよろしくお願いします。いっぱいつくととっても投稿が早くなります()
いつ更新されてもいいようにフォローも忘れずに!
それじゃまた次話で!
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