第3話 銀髪美少女と出会うヒーロー

ある青年が都心の付近の路地を歩いていた。

その青年の名前は冬月 司ふゆつきつかさ

黎明れいめい学園に通う一般高校二年生だ。

ぱっとしないボサボサの黒髪。血色の悪そうに見える色白の肌。自信がなさそうに見える猫背。目が悪いのか優等生がかけるような眼鏡をしている。

どこをどうとってもパッとしない陰キャだ。


(早く帰ってラノベ読みたいな…部屋の片づけもしなきゃだし…)

書店からの帰り道、司は裏路地に迷い込んでしまっていた。

(どうしてこんなところに来ちまったんだ…方向音痴にもほどがあるだろ…)


書店から真っ直ぐ歩けばマンションに帰れる筈なのだが、休みの日ということもあり道にはたくさんの人が

(早く帰らないと雨がひどくなるぞ…)


現在の時刻は午後5時を少し回ったところだ。比較的に暖かくなってきた頃なのでいつもなら日はまだ沈まないのだが、雨雲が都心を包んでおり辺りは暗くポツポツと先ほどから雨が降ってきたいる。


(なーんちゃって、雨降るの知ってたから傘持ってるんだよねー。俺ってやっぱできる男!)


たまたま傘を持っていただけでこの有様だ。

司はほんとに調子のいい人間だった。


(とりあえず真っ直ぐ進めば知っているところに出るでしょ!)


そうしてしばらく歩くと雨が本格的に降り出し始めてきた。

(あっぶね~傘持ってきててよかった~!)


手元に下げているラノベの本が濡れていないかとよそよそと視線を下におろしていると前の方から怒号が聞こえてきた。


(なんだよ、雨降ってるのに元気のいい奴だな。)

相変わらず呑気なことを考えていた司だったが直後に聞こえた女性の声でが戻ってきた。

(—っ!?)


傘を差し全力で駆け出す司。手元に下げていたラノベの本は乱雑に振られ水に濡らされてビショビショになっている。しかしそんな事はいざ知らず、司は全力で女性の声の元に駆ける。


何秒、何十秒走っていたのだろう。無我夢中に走っていた司にはそのようなことを考えている余裕はなかった。


「いいからこっちこいよ!!」

目の前に見える金髪のいかにもチャラ男と呼ばれてそうな男は少女の銀色の髪を乱暴に引っ張っていた。

少女は怖いのか悲痛な顔を浮かべているが叫べないでいる。

「はやくお前をめちゃくちゃにしてやりたいぜ!顔めっちゃタイプだし」


正直言って虫唾が走る。

久しぶりにこんな不快な気持ちに司はなった。

(はやく助けなきゃ!)


自分の容姿とはかけ離れている性格のが心で叫んでいた。はやく助けろと。

「お前!その子から離れろッ!!」


よっぽど夢中だったのか、司が叫ぶまでこちらに金髪の男は気づかなかった。

水を差されたのが余程嫌だったのか、機嫌がとても悪そうだ。

もっとも、司の知ったことではないが。


「どうしてこんなところにおこちゃまがいるんですかね~?」

口調は丁寧のように見えるが苛立ちを隠しきれていな様子だ。少々煽り口調になっている。

その間にも金髪の男は少女の髪を引っ張っている。

少女は今にも泣きだしそうな顔で、必死に耐えている。


「ふざけるな!早くその子を離せッッ!」

「はいはいと、俺がこんなかわいい子を離すと思うのか~?ヒーロー気取りはやめとけ~?痛いだけだぞ?」

「お前みたいな屑に言われたくない!」


司は怒りでこぶしに力を入れる。

このまま全力で殴りつけてもいいのか?


「——————!!」



少女が言葉にならない声を出したのが合図となり、

司は少女を助けるため——







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