第2話
母の病気の話があった後も、母は治療しながら変わらず仕事に行った。だから私もさほど重大なことだと思わず、それまで通り学校に通った。時々病院に行っているようで、いつか治るのだろうと思っていた。
けれど次第に母は目に見えて体調が悪くなっていき、一緒に食事をすることもなくなり痩せていった。それでも私たちは普通の生活を送り続けた。みんな家族の何かが壊れてしまうのを怖がって誰も不安や恐怖を口にしなかった。
がんが見つかってもう少しで一年というある日、母は職場で倒れて病院に運ばれた。もともと二週間後に入院を控えていたということもあって、その日そのまま入院することになった。父から連絡が入っていて放課後病院に向かった。母の主治医から詳しく病気の進行について聞かされ、この時初めて余命宣告を受けた。帰る前に母のいる病室に寄ったけれど母はいつも通り笑って雑誌を読んでいて、まだ実感は湧かなかった。きっとすぐに家に帰って来るのだろうと思っていた。
しかし、そんな日はいつまで経っても来なかった。抗がん剤で具合が悪そうにしている日が増え、お見舞いに行っても寝ていたり検査や投薬中だったりして、ゆっくり話すことは出来なかった。たまに顔を合わせると申し訳なさそうに笑って、ごめんね、とこぼした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます