第2話

 母の病気の話があった後も、母は治療しながら変わらず仕事に行った。だから私もさほど重大なことだと思わず、それまで通り学校に通った。時々病院に行っているようで、いつか治るのだろうと思っていた。

 けれど次第に母は目に見えて体調が悪くなっていき、一緒に食事をすることもなくなり痩せていった。それでも私たちは普通の生活を送り続けた。みんな家族の何かが壊れてしまうのを怖がって誰も不安や恐怖を口にしなかった。

がんが見つかってもう少しで一年というある日、母は職場で倒れて病院に運ばれた。もともと二週間後に入院を控えていたということもあって、その日そのまま入院することになった。父から連絡が入っていて放課後病院に向かった。母の主治医から詳しく病気の進行について聞かされ、この時初めて余命宣告を受けた。帰る前に母のいる病室に寄ったけれど母はいつも通り笑って雑誌を読んでいて、まだ実感は湧かなかった。きっとすぐに家に帰って来るのだろうと思っていた。

しかし、そんな日はいつまで経っても来なかった。抗がん剤で具合が悪そうにしている日が増え、お見舞いに行っても寝ていたり検査や投薬中だったりして、ゆっくり話すことは出来なかった。たまに顔を合わせると申し訳なさそうに笑って、ごめんね、とこぼした。

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