人並み
言いたい奴には言わせておけ。
相手にはしない。
オレはお前らとは違う、特別に不幸なんだ。
開き直ることで自分を維持して生きてきた。
女とちゃらちゃらしている奴は見下していた。
女に逃げられた、金を騙されたという話には、どーしようもないバカな奴と嘲笑した。
女を見ると母親を思い出し、憎悪と、憧れ、最後は過去の記憶がよみがえり悲しさで押しつぶされる。
女を一人の人間として向き合うことなど、怖くてできない。再び見捨てられて自分が壊れていくような気がした。
温もり、安らぎ、永遠…こんなもの嘘。
突然電話が鳴った。
友也から、LINEしても返信が無いので掛けたという。
仕事の帰りだが近くを通るので寄ると言ってきた。
日も暮れたころ、途中思ったより道が混んでいて遅くなったとスーパーの袋を下げて友也が入ってきた。
差し入れー、と言いながら冷凍食品や缶ビール、サラダ、パンや菓子をテーブルの上に広げた。自分では買わないような珍しい物がいろいろ有る。
友也はとりあえず…と言いながら乾杯の仕草で缶ビールを少し上げ、二人は飲み始めた。
仕事まだ?友也が訊いた。
うん決まってない、男は温めた冷凍スパゲティを頬張りながら頷いた。
それからしばらくして、男が話始めた。
住んで半年だけど、変な女がいる。
友也はビール缶を持ちながら男の方に顔をあげることなく片手でスマホを操作していたが、
へえー誰?、と男の方へ顔を上げた。
夜中に外で踊っている二十歳ぐらいの女。
もう3日にもなるけど、夜中に窓を開けると、独りで踊ってんの。
で、どうした?
いや、見ているだけ。
隣の住人が夜、庭で身体動かしているとか?
隣は爺さんと婆さんだけで、若い女は居ないはず。
キモイけど、気になる。
話しかけられているような気もするし。
珍しいね、女の話なんかするの、どしたの?
友也はからかうように、ふざけて笑った。
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