針の音が聞こえるそんな青い空間で

唯乃蜜柑

第1話 依存 執着 オーバードーズ

 宇宙が見eる

 多幸感に


 小旅行トリップ


「逃げにににげちゃうまどにげちゃう宇宙が逃げる追って、追って!! 」

 白と黒の明滅にビカビカした星がカーテンの裏を飛んでいく押しのけて押し上げてその先

 ぐわぐわふわふわ夢心地であたたかいしあわせで羽毛とも犬の毛とも分からないやさしいものに包まれて

 やさしくて、あたたかくて、しあわせで、なみだがでた。


「待って、待てって葵。窓は逃げない、落ちるから待って」

 おぼつかない足取りで、四足歩行で窓へと向かう葵を追いかける。なんとか捕まえて窓際で抱きしめた。大した力も激しい抵抗もせず、ただモゴモゴと腕の中で葵が動く。

「ああああ、ああああああああっ!うっ、オエ、ェ……ッ! 」

 突然大声で泣き出す葵をただあやすことしかできなかった。

 そのまま背中をさすっていくうちに嘔吐いてびくりと肩が跳ね上げながら吐瀉を吐き散らした。

 床に突っ伏す葵の背中をたださすっていた。

 背骨の凹凸を手のひらいっぱいに感じる。小刻みに震える体が

 涎が垂れる口端が

 グッと口を引き結んで顔を友人の首筋にうずめた。……ほのかな石鹸の匂いと少しだけ汗ばんだ冷たさが、


「あ、う……」


 葵が身じろいだのを感じて顔を上げた。

 どこか遠くを見ながら葵は柔らかく相貌を崩す。

「しあわせ」

 薬で幸せを知れるならと彼は言った。

 割られたカプセル、机にこぼした水溜り。

 細い体を抱きこみながら俺はその微妙な体温を甘く受けとめた。

 時計の針が音を鳴らす。



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