第3話 黒魔女さんは手伝う
これは黒魔女、愛峰ミルの失恋である。
ミルは覚えていた。
9年ぐらい前、彼と約束したことを。
『ねぇ、私たちが大人になったらさ、結婚しよ!』
『は?お前、何言ってんだよ?...ったりまえだろ』
顔を赤らめる少年。
『うふふ、よかった...』
『俺からも言わせてくれよ...ミル、好きだ!』
顔を赤らめる少女。
『う、もういきなり言わないでよ...』
『なんか、ごめん』
しかし、少女は悲しみの表情を見せる。
『謝るのは、こっちの方なの?』
『ミル?』
『わたしね、魔女の里へ帰らなきゃ行けないの...修行するためにね』
少年は驚きの顔を見せる。
『え?なんだよ、それ...』
『多分9年かな?そのぐらいで戻ってくるんだけど、それまでにさ、清光に好きな人ができたらさ、この約束はなしね。』
『は?お前、何言ってんだよ!俺の好きな人はずっと...』
『ずっと?』
『お前しかいねぇよ...』
『ふふ、ありがとね』
■
清光くん、約束通り、あの約束は破棄ね...
黒魔女さんの目元に涙を浮かべる。叶うはずだった恋は今、泡となり消えて行った。その代わりに、決意する。
私が好きな人の恋路を手伝う、と。
魔法を使えば、清光くんと一緒になれたかもしれない。でもね、私はそうしたくないの。騙して勝ち取る恋なんていらない。
私は清光くんが好き。清光くんは他の人が好き。
なら、好きな人の好きな人がつながることを願った方が私の失恋に格好がつく。
彼女は決意した。叶わぬ恋となった恋の最終回を描くために。
■
一方...
あの黒制服、一体何言ってたんだよ。勝手にバラしやがって...
明日から、どんな顔で学校行けばいいんだよ。
なおさら、変な自己紹介したのに...
彼は後悔してた。
■
瑠李の部屋。
ベッドに寝ている?いや、ドキドキで寝られない。
理由は、単純明快。
彼女もまた、清光くんが好きだから。
『ああ〜、明日どうしよう...』
清光くんが私のことを好きでいてくれてるかもしれない。そんなことを妄想しながら、彼女はベッドで包まる。
彼との未来を望んで。
■
真理恵の部屋。
彼女は勉強していた。ふと、窓の先を見る。わたしの好きな人はまだ起きてるみたい。清光...
彼女は清光の幼なじみゆえに、あまり清光に恋愛感情が私に抱いてないのは、重々承知。
それでも、私は清光が好きなのに。いつもツンってしてしまう。だから、瑠李ちゃんに清光を取られちゃう。
私は私だけの恋を叶えたい。そのために、猛アタックしなくてはいけないのに、どうしても照れてしまう。
清光...好きだよ。
➖➖➖黒魔女さんは勉強が不得意➖➖➖
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