第2話 黒魔女さんは憶えている

さあ、俺がプライドを捨てた自己紹介をしたとこで、自分の席へ座りに行った。


縦5横7席あるなかの真ん中で一番後ろにある席。

前に幼なじみ、右に好きな子、左は例の黒い制服の子。


なんだか、見覚えが...


『ごめんなさい!』


そう叫ぶ黒制服。


『あの、今日ぶつかった黒魔女の愛峰ミルです...』


ああ、あの時の...って、なるかー!!

そのせいで、俺は最悪な入学式になったんだぞ!

ま、結局遅刻してたから、どちらにせよだがな!


そんな気持ちは置いといて...冷静になる。


『いやいや、別に気にしてないよ』


『そうですか?それは良かったです...』


いや、良くはねえぞっと、思いながらも優しい笑みを浮かべる。


そしたら、前から現る魔王が、俺の足を蹴った。


『イッター!何すんだよ!真理恵!』


『あんたこそ、あんな恥ずかしい自己紹介して!なんか、こっちが恥ずかしくなったわよ!』


『お前は俺の母か!』


そんな押し問答してる最中、右から天使がやってくる。


『仲良いのね、2人は』


『『仲良くない』』


ああ、なんてかわいいんだろう、それなのにこいつはかわいくないな、もっと大人しくしろよ!


そう思った。


『は?かわいくないって、どういうことや!』


『え?お前、何言ってんだ?』


瑠李ちゃんの方を見ると顔を赤らめている。


『わたしより、るりりんの方がかわいいんだ〜』


なぜか俺の思ったことが漏れている。

なぜ?


『あれれ、こんなはずじゃなかったんだけどな〜』


ま・さ・か...


このミルって奴のせいか?


『おいおい、一体どうしたんだ?hey 彼女!』


『え、君、瑠李さんのことが好きなんでしょ?だから、手伝ってあげた。』


うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!

お前、まだ本人に言ってないことをサラッと言いやがったぞ!


前の子も、右の子も顔を赤らめて、黒板の方を見る。


『ちょ、お前!ちょっと、来い!』


『え?なんで?』


『良いから、来い!』


『え、それだったら、り...』


『うわぁぁぁ!お前な...!!』


俺は黒制服を連れて、外を出た。


『コラ、桐生くん!どこ行くの?』


『先生...ちょっと大事な話があるので...』


恐るべき覇気を放ち、教室を出る。

残されたもの。


『...ばっかじゃないの...清光...』


『清光くんが...わたしのことを...』





俺は現在、教室近くの階段にいる。

目の前の黒制服に、洗いざらい聞くために。

なぜ、俺の想いが漏れたのか。


『だって...清光くんのを手伝いたかったから...』


『いやいや、そういうわけじゃなくて...お前は何者だ?』


『...憶えてないんだ』


は?


『まあ、いいや!私は愛峰ミル。黒魔女よ!』


俺はポカンとする。黒魔女?そんな小説みたいな展開...


『まあまあ、とりあえず...君を黒魔女と仮定しよう!うん、それがいい...』


俺はもう考えるのを放棄した。なんか今日一日だけで、すごく疲れてきた。


そして、俺が戻ろうとすると、彼女が腕を掴んできた。


『本当に憶えてない?』


『あ?なにが?』


『君は、瑠李ちゃんのことが好き?』


『ちょ、お前、なんで...?』


黒魔女は笑みを浮かんだ。その様子はどこか悲しそう。


『わかったわ、やっぱりこれからも君の恋のお手伝いするわ!』


『だからな〜、お前...ま、いっか。その代わり、俺のプランの邪魔をするなよ?』


『勿論!』


『ホンマか?さあ、戻るぞ!』


彼は歩みを進める。

私は歩みを止める。


『...清光くん、幸せにね...』


彼女の涙は美しい。





さあ、戻ってきた。教室。


あれ?いつの間にか、終わってる?


『君たちね...もうすぐ、終わりのときに出ていかないでよね。』


『あ、はい...すみません』


『はい、これ!色んな書類あるから、熟読すること!わかった?』


『了解です!』


なぜか、先生が顔を背けた。

そして、すぐに戻した。


『じゃあね、気をつけて帰るんだよ!』


『はい!』


また、先生は顔を背けた。


『先生?』


『いえ、なんでもないわ』


すぐに戻り、教室を出た。


俺は身支度を済ませ、真上にある太陽を見つめる。この未来が栄光あるものだと、彼は願う。


そしてまた、それを願う3人の娘。







恋路入り乱れたドタバタラブコメ、今爆誕!




➖➖➖黒魔女さんは手伝う➖➖➖










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