黒魔女さんの恋は叶わない

アカサ・クジィーラ

第1話 黒魔女さんは恋をした


これは限りなく淡い記憶...


とある星の見える丘の上、そこに黒髪ロングの白いワンピースを着た少女が立っていた。顔はよく覚えてない。


『ねぇ、私たちが大人になったらさ...』


僕は彼女と約束した。でも、その内容を今まで忘れていた...


と会うまでは...



現在、高校一年の春。

桜が咲き誇る日。

俺は志賀高校に入学した。


そんな大事な日に、俺はなんでこんな失態をしてしまっただろうか。


遅刻。


このままだと、一生言われる入学式に遅刻した奴だって、いじられる!

俺は走る、あのメロスよりも早く全速力で。


チャイムが鳴ると同時に学校の校門。

ああ、間に合わなかった...

こんな絶望の淵に立たされたとき、空から声が聞こえる。


『わぁ〜!誰か〜!止めて〜〜〜!!』


ドスンっ


俺は下敷きになった。

箒とともに俺の上に墜落した彼女。黒髪ロング、

黒い制服、黒い帽子。まるで、黒魔女さんのよう。


『いたたっ...あ!ごめんなさい!』


俺はそのまま、気を失ってしまった。

ああ、なんて最悪な1日だろうか。



目が覚めた頃、俺は保健室のベッドで寝転んでいた。おそらく保健室の先生が言う。


『あら、目が覚めたの?大丈夫?』


と、女々しく言う先生。


『あ、はい...』


『あら、そう...災難だったね〜、黒魔女さんが上から降りてきて、ぶつかって、気を失うなんて。その子から、謝罪来てるわ』


寝覚が悪い。


『あ、そうですか...』


『ま、元気なら、早く行ってきなさい!ちょうど、入学式終わって、自己紹介してる頃だから。』


俺は、今すぐ夢へ戻りたかった。理由?そりゃ...

保健室の先生がごりごりの筋肉男だから。口調も女々しいし。あまり、この時代にこんなことを言うのもなんだが、大分悪夢。


俺はそそくさと、保健室を後にした。


『お気をつけてね〜❤︎』



俺は逃げるように廊下を歩く。たしか、俺のクラスは3組だったはず。俺の高校は少し変わっていて、入学前からクラスが発表されてる。


だから、俺にはわかる。


このクラスに大親友、幼なじみ、そして俺の好きな人がいることを!!


本当はこの日に告白しようと思ったが、思わぬ災難によりそれは叶わなかった。せっかくいいシチュエーションを考えていたのに。


ガラガラっ...


教室のドアを開ける。


『おー!やってきたぜ!我らがプリンスが!』


そう叫ぶ親友の城之内 白悠しろゆう。俺が眠ってる間に何があったのか。彼がそう叫ぶとクラス中が騒ぎになる。


『コラコラっ、やめなさい!』


担任が制止しようとしても、何も変わらない。


『もう...ごめんね、桐生くん...』


そういや、まだ俺の名前を明かしてなかったな。

答えよう、俺の名前は...


『いえいえ...どうもー!入学式早々遅刻したプリンス、桐生清光でーす〜!』


なんだか、俺のネジは吹っ飛んだらしい。


俺のことを蔑むように見る幼なじみ、円堂真理恵。

同級生と一緒に笑う彼女、齊藤瑠李。

そして、見覚えのある一際目立つ黒い制服、青い瞳。










➖➖➖黒魔女さんは憶えている➖➖➖







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