第42話 家族

街にたどり着くと、サイツァーさんとは別れた。そして、ガンツさんの屋台へと向かう。

「すみません。ガンツさん。今日はホーンラビットの肉を確保できませんでした」


「なんだぁ。そんなことか。大丈夫だ。明日の分は傭兵ギルドで確保できてる。心配すんな」

ガンツさんは軽い調子で返してくれた。そしてガンツ家へたどり着き全員がそろった時。


「ガンツさん、テーゼさん、カシンさんにお話があります。実は、薬師工房を経営することになりまして、今日従業員を孤児院より見受けしてきました。今セバス様に家を探してもらっている最中で近々この家を出ることになると思います」


この話をすると明るかった家庭内が急に暗い雰囲気へと変化してしまいテーゼさんとカルアは抱き合って泣き出してしまった。いつもはレイにべったりのナインも今日はカシンに甘えているようだ。レイはガンツさんに声をかけられる。


「黙ってことを進めていたことには腹が立つが決めてしまったことは仕方がない。だが1つだけは忘れるな。俺たちはもうずっと家族だ。いつでも帰ってこい」


そう言ってレイとガンツは抱き合った。その日の夕食は少し塩辛かった。


次の日レイ達は鍛冶屋へと足を運んだ。蒸留器の進捗を確認するためだ。工房に着くととても静かで誰も店番をしていなかった。

「テッシンさん。いますか~」

そう呼ぶと奥から目の下にくまを作ったテッシンさんが現れた。


「やっと来たか。例の蒸留器とやら試作品だができてるぞ。少しだが動かしてみた結果できた水もある。確認してみてくれ」

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蒸留水

・不純物の含まれていない純水

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「確認できました。問題ありません。これと同じものが数台欲しいのですけど作れますか?」


「無理だ。今回はセバス様の協力もあって南の街前線の魔物の素材を使用している。それが確保できない限り今回作った蒸留器とやらは作れねぇ。しかも前線となると魔物はほとんど回収しねぇ。だから素材が回ってくるのはいつになるかわからねぇぞ」


話を聞くにどうやらこの世界には輜重兵の概念がなく物資はほとんど自分で準備して自分で運んでいるようだ。これは傭兵ギルドに※輜重部隊の編制をお願いしないといけないと思ったレイだった。

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残金:大銅貨47枚 銅貨123

※輜重部隊:必要物資を運ぶ輸送部隊

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